4月 7日 始業式1:ミフユ「フルーツパフェ3つお願いします」

日向肇ひゅうがはじめ


 高校2年生の始業式。クラス替えの発表があった。古城はA組で変わらず。俺はA組からB組に変わった。陽子ちゃんは変らずE組だった。古城からは始業式の後で二人に相談したい事があるから、パフェの店で会わないかとメッセをもらっていた。

 パフェ好きの陽子ちゃん釣っているよなあ、断ることはあり得ないだろうなと思いつつ、陽子ちゃんにメッセを送って確認してみた。


肇:陽子ちゃん、どうする?

陽子:別に迷うことないでしょ。

肇:ごもっとも。


 ということで各クラスのHR終了後に校門で待ち合わせて連れだって喫茶店へと向かった。


三重陽子みえようこ


 始業式。残念ながら冬ちゃんと同じクラスになる事はなかった。肇くんはよく会っているからクラスは別の方がいいかなという思いはあるし、彼と私が親しい友人の間柄だというのは学校側も知られているみたいで同じクラスになる事はなかった。


 喫茶店に着くと冬ちゃんはさっさとマスターに注文を通した。

「フルーツパフェ3つお願いします」

ここはもともと肇くんが見つけたお店でパフェ目当てだった。そして去年生徒自治会関係の会議で開催通知のいい加減さを怒った時、彼はその怒りを発散するのにいい店があるとここに連れてきてくれたのだった。

「ねえ、陽子ちゃん。私達もスラックスで登校したいと思わない?」

彼女にそう切り出された。

「そうね。そうしたい人にはそういう選択肢が与えられてもいいと思うけど」

正直、あまり考えたことがなかったな。

「でも、陽子ちゃんも私服はパンツとか多くない?」

「ワンピースとかない訳じゃないけどメインはパンツルックかなあ。言われてみたら」

肇くんは困った顔をしていた。話の行方が分からないからだろう。

「冬ちゃん、制服廃止とかまで視野に入れてるの?」

「それが多数意見になるならありだとは思う。標準服方式取っている学校もあるでしょ。制服じゃないけど着たければどうぞ、っていうやり方。ああいうのもありかな」

「全面否定じゃないんだよね」

「うん。選択の自由を広げたいなあと思ってるだけ。だから最低限の主張は?って聞かれたら女子制服へのスラックス追加になるよ。上はもとより男女共通のブレザーだから難易度も低いと思うし」

「確かにね」


日向肇


 やっと話の流れが理解できた。古城はどうやら制服制度について何かしたいらしい。

「女子の話の目的は分かった。俺も賛成だ。じゃあ男子側の意見としてついでに夏制服の追加もやりたいな」

「何かな、それって?」と陽子ちゃん。

「うん。最近、ポロシャツを夏制服に採用している学校があるよな」

「たまに見かけるね」

「あれも男女共通でいけるから半袖ワイシャツとネクタイ以外にポロシャツの着用を認めてくれたらいいなあって思わないか?」

「いいアイデアだね。それは思いついてなかったわ」

おお、古城も賛成してくれたか。


 そこにマスターがフルーツ・パフェを持ってきてくれた。

「はい。おまたせしました」

我々三人の前に挑むべき甘味が届いた。

「あとは食べてからかな」

『そうだね』と二人から同意の返事があった。

ここからしばらく「美味しい」「今だとキウイも合うねえ」というパフェへの讃辞しか出てこなくなった。

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