第1話 無能力者




「お前、私と契約しろ」


 白い長髪で青い肌をしたゴスロリ風の服を着た少女は俺に向かってこう言い放った。


「は、はぁ…?」


 俺は思わず呆れた声しか出ず、その少女を見つめた。


「…おい、お前。契約しろと言ってんだからさっさとしろ」


 苛立った口調で契約を迫ってくる少女。

 契約…、俺を奴隷にするつもりなのか知らないがしたらしたで面倒なことになりそうだとなんとなく思った俺は、


「あの〜。お言葉ですが、契約なら俺以外のでもよいのでは…」


 と少女に向かって、申し訳さそうに弱々しく言った。

 しかし少女はデカイ態度で、


「お前は転移者だろ?誰でもいいが契約自体は転移者か転生者でないと成り立たない。早く決めろ。」


 と変わらず何度も契約を迫ってくる。しかしてんせーしゃ?てんいしゃ?さっきからこの少女の言っていることが理解できずにいた。少女の態度に俺は我慢できず


「さっきから転生だの、転移だの、意味がわからねーよ!だいたいなんでお前と契約しなきゃなんないんだよ!てかお前は誰なんだよ!」


 と声を荒げてしまった。


 しかし少女は気にしておらずむしろ見下すように


「はぁ?お前は自分自身がどうしてここにきたのか知らないのか?全く、これだから転移者は無知で困るんだ。仕方ない、教えてやるからちゃんと聞け」


 なんか悔しい…しかし何も説明されてないのにこんなにも罵倒されるとは思っていなかった…


 少女はそんな俺を気にもとめず進めた。


「ここはアークエデン、お前らみたいな別世界でを転移者または死んで生まれ変わったやつを転生者と言ってそいつらを受け入れる場所であり、くそったれどもがお遊びで作ったその能力を手にした転生者と転移者どもの支配する地獄だよ」


「ちょ、ちょっと待て!俺は死んでないぞ!?」


 思わす声を荒げてしまった、なぜなら彼女が言うには死んだやつしか行け


 ない場所に俺がいるからだ。

「あぁん?」


 相変わらず不機嫌そうに彼女は俺を睨みつけこう言った。

「お前、天使にあったか?」


 天使…なんだそれは?そう質問すると少女は急に笑い出し


「アッハッハッハ!!見てないか!そうかそうか!天使ってのはお前みたいなのに力を与えるやつのことだよ。しかしまさかお前、だとはな!面白い奴もいるもんだ!」


 意味がわからない、無能力者とはと続けて質問した。


「お前みたいなたまたま一緒に転移したやつのこと言うんだよ。」


 少女は笑いながら俺を指差し、話を続けた。


「そいつらは天使に選ばれなかったおこぼれみたいなやつだから能力なんてつけられるわけがない、ここで野垂れ死するのがオチだ」


 その言葉を聞いて、元の世界に帰れる希望がないとにすぐに感じた、もうダメだと諦め、落胆したその時だった。


「だがお前は運がいい、私ならお前を助けることができるぞ?」


 少女は急にそう言い放った、俺は藁にもすがる気持ちで

「そ、それは本当か?!」と聞いた、少女は。


「あぁ、このルシェーナ・アーヴェル・ヴァンス・ヴェートルセンに任せておけば全て解決するぞ?あと、私のことはルーシェと呼べ、いいな?」


 根拠はないが態度からして多分頼りになる。いや、頼りになってほしいそう思いながらも俺は彼女についていくことにした。

 契約の件は後回しにしてもらって、とりあえず彼女が言うにはその解決するにはこの森を抜けたグランチャルドという国に行かなくてはならなく、そこに元の世界に帰れる手がかりがあるとか。


 そうしてグダグダと始まった旅だが、幾らか疑問に思ったことがある、それをルーシェにぶつけてみた。


「さっきまでよくわからない言語だったのにどうして日本語を?」


 と言ったらルーシェは


「はぁ?!バカか?こっちに合わせるように魔法を使ったんだよ、読み書きはできないないにしても喋ることぐらいできないと私が困るからな。お前の言語がどうだったかなんて興味もない」


 と言い放った。「そんな魔法が使えるなら他にも色々できるのか?」

 とまた質問すると

「お前はさっきから聞いてばかりだな?、まぁいい…。そうだ。なんでもできるぞ?建物作ろうがデカい花火だそうがなんでもできるぞ?」

 なかなかすごいな…、そんなことを思いつつ彼女に一つ頼みごとをしてみた。


「俺の…この道具を使えるようにできるか?」


 ここに来る前なんとか手にしたスマホだが、圏外なのは当たり前だが家族や友人に心配をかけないためにもどうにかして使えるようにしたいと思いダメ元で聞いてみた、すると…


「あぁ、構わないぞ?」


 ルーシェはすんなりと快諾、また右手を光らせスマホに手をかけた。

 恐る恐るスマホので電源をつけると…何事もなく起動したのだ。

「なんだこれ?!マジックかよ!」と俺ははしゃぎながらもルーシェは偉そうに。


「タダでやってんだから感謝しろ、お前が契約するためなら私はなんでもしてやろう」


とドヤ顔でそう言った。

 そんなやりとりをしているうちに夜になったのか辺りは暗く、進むと何かが出そうなくらいだ。ルーシェは「お前をここで失うわけにはいかない、ここで野宿するぞ」と言って二人でそこらの木の枝や葉っぱを集め。それを魔法でを燃やし焚き火をした。ルーシェは意外とお節介焼きなのか夜の魔物のこと、ここに生えている薬草やキノコのことなどあれやこれやと教えてくれた。さすがに布団は出してくれはしなかった。

 その日の夜、ルーシェに使えるようにしてもらったスマホで友人や家族に連絡をすることにした。友人が言うには俺はスマホを手にした瞬間と同時に人が上から落ちてきてそのままその場から消えたらしい。不思議なことにこちらの時間はあっちとは違うらしく何十分もかけて書いた文章はほんの数秒送られるそうだ。

その後ルーシェに「さっさと寝ろ!」と怒鳴られた俺は友人にまた後でと伝え、眠ることにした。

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メアリーズ・ヒーロー 〜正義を名乗る偽善者たち〜 馬ナマコ @uamanamaco

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