第12話 コンビニへ 1
コンビニへ行く前に、まずはグラウンドだ。
そこには意外や意外、誰もいなかった。
「誰か―――」
僕は目を凝らす。
生存者を探してしまう。
コンビニに行く、食料を得ることが目的だったはずだが―――心細いがゆえに、人間を探す。
凝らして探す―――部室棟の壁沿いに、隠れるように動き、周囲を見渡す。
階段の下で、捨てられた制服が重なっていた。
血で赤く染まった制服と―――その『中身』もあった。
ピクリとも動かないので、すぐには気づかなかったが。
「………!」
口を抑える。
そして考えを改める。
改めるに、生きている人間は―――誰もいない、ようだった。
僕はここで、周囲に誰も『あいつら』がいないことを確認し―――しゃがむ。
膝をつく―――そして靴ひもを結ぶ。
硬く、結び直した。
「さっき、やっておけばよかった―――部室の中で」
呟きながら、覚悟は決める。
また全力疾走する
部室棟から離れ、植木沿いに小走りに駆ける。
道路は近かった。
ここは正面の校門ではなく、グラウンドや部室棟の出口。
まあ、勝手口のようなものである。
あれから一晩経った、高校の外を、見る―――横断歩道の左右をしっかり見てからわたるように交通教室で教わった日の小学生のように、僕は道路へ顔を出す。
道路はいつものように存在していたが、人がまったくいなかった。
遠くで動いている人影があるが、どんな人物かはわからない。
道路に見慣れないものがあると思ったが、車だった。
真横を向いて、腹を見せている。
スピンしたのだろうか。
「………」
車………車のドアが、助手席側だけ開き、窓ガラスが割れている。
中に人は見えない。
その横で、歩道を歩き去る。
じっくり検分するような時間などない。
状況をしっかり見定める時間はあるだろうか。
コンビニに行って、帰るまでに―――何かわかるだろうか。
何も知らないよりは―――あの六畳あるかないかという部室にずっといるよりはわかるか。
その路程は入学時から毎日行き来、登下校している道だった。
しかし、見る目が変わったというか―――新しい。
新鮮な気持ちと。
腐敗した大気と―――どことなく、そんな臭いが入り混じり、総和し。
一分一秒が重い。
僕の歩いている道の、左には道路、右には民家の塀―――塀ならばいいが、植木が並んでいるのみならば、向こうから襲い掛かってくる恐れがある。
………いや、注意していればきりがない、全部は見ることができない。
いざとなれば走るしかない。
目を凝らして、回りを見てどうする。
用事があるではないか。
行き場所があるではないか。
水を、もしくはジュースか清涼飲料水といったたぐいのものでもいい。
ちょっとコンビニに行ってくるのが、重要なのだ。
僕は歩く………音は立てず、競歩のようになった。
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