異世界へ


 ―― 『異世界』に戻る日……午前


 ホテルをチェックアウトしたケイゴ達は、長島から連絡が来るまで町を

 ぶらつく事にした。ただの時間潰しだ。三人は喫茶店に入りお茶を飲む。


 テレジアがメロンソーダを飲みながらケイゴに話し出した。


 「ねえ ケイゴ あっちに電気は持っていけないのかな?」

 「駄目だな あっちで電気を実現するには大変だぞ」

 「そっかあ…… ドライヤーとか洗濯機なんか超便利なんだけどね」

 「そんなもん誰かに見られたら大変な騒ぎになるぞ」

 「うん」


 ケイゴがコーヒーを飲みながら話を続ける


 「今まで通り三人で暮らすには 目立たず溶け込んで生活していかないとな」

 「……そうね」

 「二人とも くどいようだけど ここでの話は誰にも言っちゃ駄目だからな」

 「うん 言ったところで誰も信じないでしょうけどね フフ」

 「うん! 誰にも言わん」

 

 するとケイゴはケイナに


 「ケイナはおしゃべりだからな」

 「なっ なんでじゃ!?」

 「テレジアに俺が『異世界』に行くこと言ったろ?」

 「……あ あれは」

 「もう! よしなさいよケイゴ」

 「ハハハ ちょっと意地悪だったな ごめんなケイナ」

 「ケイゴは意地悪じゃ!」


 ケイナは剥れながらも笑みを溢し、ジュースを飲んだ。


  ピポロン ピポロン

 長島からの電話だ。ケイゴは立ち上がり一人で店の外に出る。


 《もしもし》

 《おお ケイゴか わしじゃ今着いた 何時でもこっちに来てもいいぞ》

 《わかった 今十一時か 十三時いちじから十四時にじまでにそっち行くよ》

 《わかった》

 《あ ホテルありがとう》

 《ああ お安い御用じゃ》


 ケイゴは十四時までに用務員室に行くと伝える。電話を切り終えると店に入り

 支払いを済ませる。


 「すぐ行くの?」

 「いや 飯食ってから行こう 何か食べたいのあるか?」

 「あたしは何でもいいけど」

 「グルグル!」

 「グルグルは飯じゃないからな ハハハ まあグルグルは買って持って帰るか」

 「やったあ! グールグル グールグル」


 ケイナは上機嫌である。

 

 「とりあえずグルグル買って昼飯だな」

 

 ケイゴ達は店を出ると駅中にあるケーキ店でロールケーキを二本買う。その後

 レストランに入り昼食を取る。その時、ケイゴは思った……


 (テレジアもケイナもこっちの世界に来て驚いたのは初めだけ……順応するの

 早すぎるだろ ナイフとフォークを使い、呼び出し鈴で店員を呼び注文を追加

 するとか……俺がはじめて『カナル』に行った時とは大違いだな)


 「なあ あっちに戻ったら何か依頼でも受けないか?」

 「依頼? どうしたの?急に」

 「いや 馬小屋も出来たし暇になるから『魔獣』退治でもいいけどな」

 「そうね 最近は冒険者っぽいこと 何もしてなかったもんね」

 「ケイゴ! 旅? 行こう!」

 「よし! 帰ったら組合に行って何か探すか」


 三人は食事を済ませるとケイゴが通った中学校へタクシーで向かった。

 到着した三人は長島が待つ用務員室に入る。すると、長島は着替えの最中

 だった。


 「おお 早かったのう すまんな こんな格好で ガハハハ」

 「かまわんさ」


 長島は何時もの作業ズボンに履き替えると酒を作り始めた。


 「ケイゴも飲むか?」

 「ああ 一杯だけ飲んでいくか」

 「お嬢さん方 どうだった? こっちの世界は」

 「素敵よ 特に芸能人っていうのがいいわ 素敵よ」

 「ガハハハ 芸能人か おチビさんも気に入ったか?」

 「うむ 食べ物も美味いし 気に入ったぞ」

 「そうか そうか ガハハハ」

 「のう 長島」

 「ん? どうした?」

 「また来てもいいんじゃろ?」

 

 長島は一瞬ケイゴを見てから、一呼吸置き……


 「ああ もちろんじゃ ケイゴと来なさい」

 「そっか! 長島はいいやつじゃのう!」

 「ガハハハ」


 ケイゴは少しだけ笑みを浮かべウイスキーを飲んでいた。


 長島はテレジアの方を向き、まじめな顔で一言だけ言った。


 「テレジア嬢ちゃん ケイゴを頼んだぞ」

 「わかってる 安心して」


 そう言うと、テレジアはバッグの中からこっそり指輪を取り出し

 自分の指に嵌めた。


 「さて そろそろ行こうか 今回は荷物が多いな」

 「さあ みんな入ってくれ」


 長島はロッカーを開け入れと促す。まず、ケイゴから入り次にケイナがケイゴ

 の腕にしがみつき最後にテレジアが荷物と入った。


 「うう……苦しい」

 「我慢せい! それじゃ閉めるぞ」


 バタン ガチャ


 ローカーが閉まる音と鍵がかかる音がした。

 隙間から差し込む光が暗くなり、だんだん目の前が暗くなる……

 

 「……ケイナ テレジア しっかり捉まっていろよ」

 「…うん」

 「…うん」


 視界から全ての光が消える……

 

 ――

 ケイゴは何時ものように少しづつ目を開けていく……ゆっくりと

 視界がハッキリしてきた……元いた『オリオスグラン』

 の部屋の中だ。テレジア、ケイナも腕にしがみついてる。


 「よし 着いたぞ テレジア ケイナ」


 二人は瞑っていた目をそっと開いた。


 「……あたしたちの家だわ」

 「ああ 戻ってきたぞ」

 「……不思議じゃな」

 「ブッ」

 「フフフ アハハ」

 「ハハハハ!」


 三人は顔を合わせると笑い出した。



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 ケイナ フェンリル 一度完結とさせてもらいます。

 これ以上書くと全てネタバレになってしまいますので了承下さい。


 異世界契約 ― ROCKERS ― は、まだまだ続きますので良かったら見て下さい。


 一水 けんせい

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ケイナ フェンリル 一水 けんせい @kensei_ichimizu

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