僕はドラクエ界のフリーター!アルス!

鈴木翔人

第1話

やっほ!俺はアルス!

親父は木こり、母親は専業主婦で薬草を束にする内職をしていて、三つ離れた歳の妹が一人いる、ごく一般的な家庭の17歳の男子だ。


ごく一般的な家庭で勇者の家系でもないのに「アルス」なんて名付けた親を恨んでいる!馬鹿じゃないのか!?


俺なんか剣の腕前も全くだし、魔法も使えない。そもそも運動能力がないんだよね。

完全に名前負け!


顔もダンビラムーチョに似てるって

女子が陰で言ってるのを俺は知っている。

完全に人生詰んでいる。



最近はひのきの棒の需要があまりないらしくて親父の仕事もうまくいってないし

親がなんかしろって言うから

嫌々道具屋で週4でバイトしている。


バイトはマジでだるい。

こんな田舎町に勇者とか来ないし

来るのは近所のジジババがコリに効くからと言って薬草を買いに来る程度。


しかも今日から薬草5Gセールだ。

近所のジジババが集まってくる。


「いらっしゃいませ〜薬草セール中です。いかがですか?」

ってロボットみたいに言わされるんだ。

言わないと店長に怒られる。

地獄だ。

薬草くらい自家栽培しろやクソが。




あ〜あだりぃー

カワイイ子でも来ないかなー


カランコロンカラン。



アルス「いらっしゃいませー薬草セール中でーす。いかがっすかー。」


???「あれーアルスくんじゃないか、道具屋でバイトしてたんだ!」



げ!!


武器屋の息子のテリーだ!!


成績優秀、剣技得意、魔法使える。

武器屋も全世界にチェーン展開してるからめちゃくちゃ景気がいいらしい。

コイツにだけはバイト姿見られたくなかった。


しかも女を連れやがる!!

あれは村一番の美女、村長の娘エリザ!!

付き合ってたのかよ!!

畜生死ね死ね死ね!!




テリー「紹介するわコイツ、彼女のエリザ」



知っとるわ!!

偉そうにコイツとか言ってんじゃねぇ!!

さっさと帰れよバカ!!



エリザ「こんにちは。」


アルス「こんにちは。へーそうなんだ。付き合ってたんだね。へー。」


テリー「うん。二か月前からね。アルスは彼女いないの?」


アルス「あー俺、あんまり女とか興味ないんだよね。」


テリー「そうなんだ。変わってるね。」



そんな訳ねぇだろ!ボケ!!



アルス「ところで今日は何を買いに来たの?」


テリー「あーちょっとエリザと城下町に行きたいからキメラのつばさが欲しくてさ」


アルス「いいねー!旅行?」


ヤッてんな。

これは確実にヤってる。



テリー「俺が城の兵士として就職が決まったから二人で住む家探そうと思ってさ。」



倍率数千倍とも言われてる城の兵士に就職決まってんのかよ…。


負けた…。


何もかも…。


アルス「武器屋継がないんだね?」


テリー「武器屋継ぐ前に色んな経験しとけって親父がうるさくてさ。」


何を余裕ぶっこいてんだ。

武器屋潰れろ×100


テリー「アルスは就職してんの?」


アルス「いんや、ただのバイト。」


テリー「道具屋でバイトとか退屈じゃない?」


アルス「いやぁでもこれしか出来ないしね。マニュアル通りやればいいから俺には天職だと思う。じいさんばあさんの相手も意外と楽しいよ。ハハッ。」


テリー「そうなんだ田舎町でジジババの相手とか俺には耐えられないけどなぁ。人には向き不向きがあるもんだね。」


アルス「そ、そうだね…。」


テリー「キメラのつばさありがと。じゃあまた機会があったら」


エリザ「ありがとうございます。」


アルス「また是非来てよ。」



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・



二度と来るな!!


ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!


完全に負けた。


情けない。



何が情けないって、道具屋で働いてる事じゃなくて、テリーに見栄を張ってバイトが楽しいとか嘘をついた事だ。

さっきまで自分で文句を言っていたのに。


楽しいわけねぇだろがい!!

こんな仕事。

なーにが天職だ。


あーあ死にたい。


どこかにザラキを掛けてくれる僧侶は居ないだろうか?

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