第2話 委員会決め

壊れたおもちゃのようにカクカクとした動きで担任のいる教卓へ向かいそして、教卓の前に立つ。


「君たち、遅刻してきたくせになぜそんなに元気なのかなー」


しゃべり方はいつもと変わらない。だが、声のトーンは低くしゃべり方にも抑揚がない。

それがこのクラス担任が怒っているときの態度だ。


「しかもなにも言わずに自分の席に座ろうとするとは」


「それは・・・」

と口ごもるジェラール。


それはなんだ、といわんばかりに睨まれる二人。


「仕方ないだろ、さっきので気が動転して・・・」


と言い訳を口にする。途中で自分がやってしまった失態に口が止まる。


「アホか、言い訳するんじゃないわよ!」


そういうと二人の頭に担任のオカマ教師の拳骨が入る。このオカマ教師は能力者ではないのにも関わらずものすごい力だ。それも無理はないだろう。


彼は魔族でしかも元国家警察庁の人間だ。昔、国家警察庁にいたとき怪我をして能力を無くして一線から退いたがそれでも腕力は全盛期のままだから。


「痛ってー、この腕力バカが」


担任はさらに不機嫌になる。


「乙女に向かって力の話はするな、失礼だ」


そういいもう一回二人に拳骨を浴びせる。

ジェラールは頭を押さえてなんで僕まで、と小声で反抗したが幸い聞こえてはいなかった。ホッと胸を撫で下ろした。


「さあ、そろそろ入学式と始業式が始まるから体育館に移動しなさいよ」


オカマ教師は一回手をパンッと叩いて生徒たちに指示を出すと教室から出ていった。




とある場所


ここにはたくさんの人がいる。その人たちは全員が静かに椅子に座っている。すると


「生徒会長挨拶」


誰かの声が聞こえた。


そして、


「一年生、ならびにその保護者の皆様、ご入学おめでとうございます」


大音声が轟いた。


「うわ!」


声にびっくりし、鼻ちょうちんが割れる。

今まで寝ていた男が目を覚ました。その男、真田翔は無言で周りを見回し状況を確認する。


どうやらここはだだっぴろい講堂、いや体育館だ。そう思った途端なぜ自分がここにいるのか思い出した。



・・・今、入学式じゃん!そうか、俺は入学式の最中に寝てしまったんだったな。翔、うっかりうっかり


と舌を少し出す。


・・・今のはかなりキモいな。自重しよう。

そういえばこの場所の紹介がまだだったな。


ここは体育館。まあ、体育館とはいっても観客席があるとか普通の体育館ではありえないけどな。


そして今は入学式の最中だ。まあ、他のところのものとは違って拡声魔法を使ってスピーチをするんだけどな。


そして俺の今の位置は前から11列目の左から8番目の席だ。

入学式は、3つの学科が集まって行う。

入学式と卒業式はこうやって集まって異能科の生徒会が取り仕切るのが当たり前となっているんだ。


そうこうしている間に生徒会長の話が終わり、校長の話が始まっていた。


こういうときの校長の話はクソ長い。

そしてクソつまらない。

いつもは教頭にからかわれてばかりで面白い人ではあるが。


・・・こういうときは、全く別のことを考えないといけないな。よし、面白いことを考えよう。いつもの校長のポンコツぶりを想像すれば眠くならないだろう。

・・・ヤベえ。クソ眠い。コクッ。




翔は肩に触られた感じがしたので目を開いた。


・・・寝てまったやんけ!あ、しまった。うっかり関西弁に。


「ぐっすりだったね」


そういわれて周りを見回すとみんな立っていた。時計をみると15分ほど時間が経っている。


次は入学生式辞だ。再び座る。


・・・クソ、立ったり座ったりさせんな大変だろうが。


拡声魔法が発動し、特有の空気の揺らめきが薄く起こる。揺らめきは少しずつ収まっていき完全に揺らめきがなくなった。新入生が喋り出す。


「暖かな春の陽射しを感じるこの季節、新入生144名は無事、湊川学園に入学をすることができました」


周りを見回しながら挨拶を始める新入生。

やがてこちらに顔を向け柔らかい笑みを浮かべた。翔にはなぜ彼女がこちらを見て微笑んでいるのか理解できていない。そんなこととは知るよしもない猫人ケットシーは見つめあっていたことに満足したのか顔の向きを前に戻す。

さっき目があったのが嘘だったかのように全くこっちを向かない。しかし言葉が中盤に差し掛かったとき、再びこちらを向いた。そして目があった途端再び微笑んだ。普通の男であれば自分に向けられた笑みだと勝手に勘違いするだろう。だが、翔はそんな勘違いなんかは起こさない。頭を下げて寝たフリをするとやがて視線が無くなった。視線を感じなくなったため再び前を向くと、なぜかまだその子はこちらを見ていた。そしてふと気づく。わずかに声のトーンが低くなっていることに。自分に向けられたものとは考えていないが念のため彼女に微笑んで見せると声のトーンは元に戻った。その後も何回か目があったがそのまま


「入学の言葉とさせていただきます。盟歴150年4月4日、入学生代表、サテラ・ハーグラット」


締めくくって入学式は終わった。その後もしっかりと話を聞くこともなく始業式も終わり教室へと戻っていった。



教室。


始業式も終わり、教室に戻ってきた2年1組の生徒たち。普段ならこの時間は授業だが今日は始業式などがあり、授業はない。翔は三大有名人の一人と言われているがそれは、異能科の問題児だからだ。有名なだけで誰も近寄ってこない。翔的には誰がどんな感情を自分に向けていようと関係ない。だから自分が見られているのに気づきながらも一人で座っていた。するとあのオカマ教師がやってきて


「 今から係決めをします。一年間通して同じ係ですので真剣に考えて決めるように。定員は各係2名です」


簡単に係の人数割りを教えるとオカマ教師は自分の椅子に座る。


「誰かクラス委員に立候補する人はいますか」


立候補制でクラス委員を決めようとするが手を挙げる人はおろか挙げようとする人すらいない。担任がくじ引きで決めようと心に決めたとき手が挙がった。クラスの全員が手を挙げた方をみると、


「俺がやります」


と立候補者が現れた。


「他にやりたい人はいますか」


と問うが手を挙げる人はいない。

決まりなら拍手をと担任がいうと、すぐに拍手がクラスを包みこんだ。

こうして男子のクラス委員が決まると女子のクラス委員もすぐにきまった。風紀委員もすぐに決まり、係もあとひとつを決めるだけになった。だがここで問題が発生した。

立候補者が全く現れないのだ。このまま推薦でもいいとなった結果、俺が推薦されてしまいこのまま保険委員をやることになってしまい、女子の方も同じ流れで決まってしまった。委員会のメンバー決めの結果はこうなった。


クラス委員・・・イアン・デルト・ホードウェン、レナ・S・サムタファ


風紀委員・・・ジェラールロラン、アン・アルケノス


保健委員・・・真田翔、エルシオーネ・レイモンド


クソ、何で俺が委員会に入らなきゃいけないんだ。そうおもったが誰も聞いてくれないのはわかっているので心の中に留めておいた。




この学校の委員会には毎月7日の放課後に委員会を開かなければならないというルールがある。各委員会ごとに部屋が割り当てられていて、その場所で一時間のミーティングをしなければならない。このことを事前に知っていた翔は委員会に所属しないようにと祈っていたがさっきの委員会決めであっさりと委員会に所属することになってしまった。同じクラスで自分と同じように推薦で委員会に所属することになったエルシオーネ・レイモンドと二人で委員会の活動場所に向かう。


「あの・・・」


小さな声で翔に話しかけるエルシオーネ・レイモンド。


「なんかよう」


声のした方へ顔を向け・・・ることもなく前を見たまま返事をした。


「朝はすいません、おもいきりぶつかってしまって。あの・・・やっぱり怒ってますよね」


上目遣いでこちらを見上げてくるエルシオーネ・レイモンド。


「うっ・・・別に怒ってなんかいないけど」


上目遣いでこちらを見てくるこの女の子から視線を逸らしてそう答える。


「お前さ、もうちょっと離れて歩いた方がいい。近いとお前まで変な目で見られるぞ。俺、問題児で有名だから」


・・・優しいな。私なんて魔王の娘なのに全然弱いし。そのせいでほかの生徒から白い目で見られているのに。

そんなことを思い、視線を外してしまった。


「あの・・・」


小さい声で喋りだそうとしたとき、


「さっきから声小さい。もっと声張れ」


「私はエルシオーネ・レイモンドです。これから一年間よろしくお願いしましゅ」


勇気をもって、翔に自己紹介した。翔は一瞬驚いた顔をしたが


「俺は真田翔だ。五勇族、真田家の次男だ」


「よろしく、魔王の娘」


それと


「さっき噛んだだろ」


「なっ」


ちゃんとばれていた。そのことをあとから指摘されて立ち止まってしまう。

立ち止まったのに気づいた翔が


「なにをぼーっとしてる。いくぞ」


そういって手を引っ張って保健室の前まできた。ドアノブをを回してなかに入ろうとすると


「あの、手繋いだままですけど」


ようやく手を繋いだままだったのに気づき手を放した。


「二人のとき以外は俺に近寄るな。それと

敬語やめろ、同じ学年だし」


「あっデレた」


つい声に出してしまった。翔はエルシオーネを睨んだ。そしてエルシオーネは身震いした。


・・・あっラップみたいになってるわ。


顔を前に向けて保健室の中に入った。


「誰っノックくらいしなさい」


ノックせずに入ってきた者に声を荒らげるとそこにはエルシオーネと翔がいた。


「くっ、真田翔」


赤髪ポニーテールの女の子が忌々しげに翔の名前を呼んだ。


「こらこらフレイヤ。いくら恨めしい相手だからって。ねー翔くん」


翔を名前で呼んだ紫のお下げ髪の女の子がフレイヤと呼ばれた女をなだめる。


「まさか君が保健委員に立候補するなんてね」


「俺は、立候補じゃない。やらされたんだよ」


「そんなこと言わなくてもいいじゃない」


翔が適当に返事すると


「隣のその子ははじめましてね。私は姫城千冬。翔くんに敵意剥き出しなのがフレイヤ・デイスタートよ」


今も敵意剥き出しにして翔を睨んでいるフレイヤを横目で見ながら姫城千冬が自己紹介すると


「エルシオーネ・レイモンドです。よろしくお願いします。姫城先輩」


・・・俺に敵意剥き出しな赤髪ポニーテールの女の子はフレイヤ・ディスタートだ。兄貴の隆弥に異能祭でボコボコにされてそれを笑った俺に戦いを挑むも俺にもボコボコにされた人だ。この人は三年生で戦闘ランクはCCで能力レベルは、レベル4のルーキーだ。


そしてもう一人は姫城千冬だ。紫のお下げ髪で回復魔法の名門姫城家の長女だ。戦闘ランクはCCCランクで能力レベルはレベル5のエキスパーターだ。


翔たちで最後だったようですぐに第一回ミーティングか始まった。


「保健委員会へようこそ。保健委員委員長姫城千冬です。保健委員とは・・・」


話が長かったためあと省略。話の内容を簡単にいうとこうだ。保健委員とはクラスで怪我人や体調不良が出たときに、保健室へつれていく役目を担う人だ。それと異能祭でも活動し、怪我人などを保健の先生のところへとつれていったりなどのサポートをすることが主な活動内容だ。


「簡単に説明したところでつぎは学年保健長を決めます。各学年に一人が保健長に選ばれ、学年での保健室利用者を調べることが主な仕事となります」


保健の先生は身体が弱く学校に来ることがあまりない。だから本来なら保健の先生が利用者を調べるところを代わりに利用者を調べるのは保健委員の仕事のひとつだ。その仕事を一学年に一人いる保健長がやるのだ。その説明を受けた保健委員たちは揃って嫌な顔した。それを知ってか知らずか


「保健長になった人は通知表に記載されます。それでは保健長をやってくれる人はいますか」


それを聞いた途端、一年も二年も多くの人が手をあげた。一年はそのあげた人の中から選ばれたが二年はなぜか手をあげた人ではなく勝手に翔を保健長にしてしまった。実は、推薦したのはフレイヤ・ディスタートだったりする。


「ちょっと先輩、なぜ俺を推薦するんですか。嫌がらせですか?いえ嫌がらせですね」


翔は自分を推薦したフレイヤに文句をいう。

しかし、


「大丈夫よ君ならできるわ」


と却下されてしまった。


「それでは、第一回ミーティングを終わります。お疲れさまでした」


ミーティングが終わるとすぐに保健室には誰もいなくなった。


「クソフレイヤー!!」


恨みを込めて叫ぶが誰もその声を聞く者はいない。




続く





人物紹介





エルシオーネ・レイモンド・・・メインヒロイン


年齢・・・16歳、


種族・・・魔族


家系・・・レイモンド家の長女、現魔王アルサス・レイモンドの娘


髪型、髪色・・・水色ロング


戦闘ランク・・・CC


戦闘タイプ・・・魔力タイプ


武器・・・魔法剣


家系魔法・・・時間魔法








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俺はぼっちがいいのになぜ人が集まってくる!? 天龍寺凰牙 @ouga-tenryuzi

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