第二話:美味しい林檎の贈りかた
プロローグ
「はぁ、うちの子可愛い」
目の前で、背の高い女性が呟く。美しい横顔に、ほんのりと憂いさえ浮かべたまま。
顔を手で覆うと、ふるふる、と小さく首を左右に振る。
「無理。可愛い。無理。尊い。しんどい。無理」
語彙力失われた腐女子みたいなことを言う。
わたしはちらり、と視線を横に向ける。マキちゃんは人肌よりやや冷めた温度くらいの笑顔を浮かべていた。
「――ねぇ、そう思わない!?」
突如、ガバッとこちらを振り返ってきた彼女にわたしたちが出来たのは、お愛想笑いと心のイマイチ伴わない同意くらいなもんだ。
「そうですねぇ」
……だってそれ以外にどうしろと。
目の前の女性はうっとりと頷くと、はぁー、と大きく息を吐いた。
彼女の前にある、大きな大きな鏡にそっと手を添えて。
「鏡よ鏡よ鏡さん。世界で一番美しいのはだーれ?」
『それは白雪姫です、女王様』
「知ってるー! それ知ってるー! でーすーよねー!!」
キャピッとでも音を立てそうな動きで大げさに頷き、ツンツンッ、と鏡をつつく女王様に。
わたしもマキちゃんも、何も言うことは出来なかった。
しいて言うなら、たぶん、マキちゃんもわたしに問いかけたいはずだ。
――ねぇ、ここ、白雪姫の世界よね?
と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます