メヒコの娘、エスパニャの通訳、激動の時代を生き抜いた一人の少女

マリンチェ――以前、中南米の歴史を調べていたときにその名を聞いたことがあった。
メヒコの生まれでありながら、エスパニャの通訳として彼らに協力した人物……。
まぁ、そんな人もいただろう、と当時の私は大して気にもしなかった。

しかし、それで終わらせてしまうのはあまりにも勿体ないと本作を読んで思う。


通訳として、メヒコ人として、一人の女性として、真実を求める者として……。
少女――マリンチェは様々な姿を見せてくれる。

メヒコの地に〈白い顔〉の人々がやってきた時代。
彼女は何を感じ、何を想い、自分を何者と知るのだろうか……。

一人の少女の人生を色濃く描く本作。
彼女をめぐる多くの人物の心理描写も丁寧に描かれている。
ジャンルは恋愛だが、戦記としても非常に楽しめる一作だ。