弱かった主人公が過去に戻り、未来の知識や密かに鍛え上げたスキルを活かして大活躍。近頃のWEB上のファンタジー小説では頻繁に見かける設定だ。
一見、本作もそうした作品のように思われるのだが……。
勇者である主人公は魔王との戦いに敗れ、とうとう力尽きる。だが彼が死ぬ直前の「過去に飛ばして、やり直させてくれ」と願ったことで、選定の剣の力により彼は一年前の世界に戻ってくる。
そして彼の途方もない戦いが幕を開ける。
魔王の前に立っては剣を振るい、命を落としながらも魔王の弱点を見つけ出すトライ&エラーの日々。
甦るたびに魔法を覚えたりして強くなっていき、徐々に魔王との力の差は埋まっていくが、埋まったものは力の差だけではなく……。
作者による本作のキャッチコピーは「ループ能力者の末路」。
わずか3話でありながらも、ループもの特有の楽しさ、そしてそれ以上のしんどさを叩きつけられる強烈な作品。
ある程度予測がついていたはずなのに、それでもぞくりとさせられるラストは必見だ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)