第2話 参上、銕(くろがね)の巨人!
「おやめなさい! やめないというのなら、わたくしにも考えがありますよ。
その叫び声に呼応するように、バギーの後部座席から人影がひとつ立ち上がりました。しかして、その影の何と巨大なことか!
どうやって、その巨体をバギーの後部座席に隠していたのでございましょう。身長は二メートルを優に超えており、もしかしたら二メートル三十センチくらいあるかもしれません。ここまでの巨体はプロレスラーでも、そうはおりません。かの伝説の『東洋の巨人』ジャイアント馬場を上回り、『大巨人』アンドレ・ザ・ジャイアントにも匹敵するか、あるいは
その姿を描写いたしますと、目の前にいる男のひとりと同じようなモヒカンの髪型で、サイドは完全に剃ってある一方、残った髪は硬く高くそびえ立っており、前面はまるで鋭く斬り落とされた断面のようになっております。その下の目は鋭い三白眼、鼻は高く尖り、口元は埃よけのためでございましょうか、バンダナで覆われております。
そして、丸太のように太い腕と足はまるで筋肉の塊でございます。体はボディビルダーのような逆三角形ではなく
そんな肉体に、青いデニム地のジーンズとジャケットをまとっておりますが、今にもはち切れそうな有様。腕には大きな金属のトゲが付いた凶悪な革のリストバンドを着けております。
そのことを見て取ったスキンヘッドは、思わず後ずさりしましたが、ここで退いては男が廃ると、必死で虚勢を張ろうといたします。
「な、何だテメエは!? 少しくらいデカいからって俺様たちがビビると思うなよ、こっちは三人居るんだからな!」
それに対して答えたのは、巨漢ではなくジャスティナでございました。
「彼はわたくしの助手の
その上から目線の物言いに対して、頭の作りが単純なスキンヘッドは目の前の巨漢の脅威も忘れて簡単に激昂いたします。
「ふざけんじゃねえ! このブラックドッグ三兄弟を舐めたことを後悔させてやるぜ!! 相手はひとりだ、ビビることはねえ、やっちまえっ!!」
そう叫んで、抱えていた女の子を乱暴に後ろへ放り出すと、二八郎目がけて有刺鉄線を巻いた棍棒を振りかざして襲いかかったのでございます!
残りの二人も、それぞれの得物を振りかぶってスキンヘッドに続こうといたしました。
それを見たジャスティナは、ひとつ溜息をつくとビシッと男どもを指さして、二八郎に命令いたします。
「愚かな……二八郎、やっておしまいなさい! 汚物は消毒なのです!!」
それを聞いた二八郎は、ギラリと目を光らせると、胸を張り、肘を軽く曲げて腕を上げてガッツポーズをとると、高らかに雄叫びを上げたのでございます。
「ガオーッ!!」
その
高くジャンプすると、スキンヘッドの胸板に空手式の跳び蹴り一閃!!
「グエッ!」
それなりに鍛えられた胸筋を持つスキンヘッドでございましたが、二メートル三十センチの巨体が繰り出した跳び蹴りに対抗できるはずもなく、押しつぶされたカエルのような声を上げて後ろに吹っ飛ばされたのでございます。
「あ、兄貴っ!?」
「テメエ、よくも兄貴を!!」
悲鳴を上げる逆モヒカンに対し、モヒカンの方は激昂して釘付きバットで殴りかかってまいりました。容赦なく二八郎を襲う釘付きバット!
バキン!!
「へ?」
しかし、間の抜けた声を上げたのはモヒカン男の方でございました。木製とはいえ、何本も釘を打ち込んである強靱なバットなのです。生身の人間に振り下ろせば、皮膚は切れ、肉が裂ける、そのはずでございました。
ところが、その得物は二八郎の極太な二の腕の筋肉に、あっさりと負けておりました。彼の肌に傷ひとつ付けることなく折れ飛んでいたのでございます。
ブゥン!
次の瞬間、風を切る音と共に、その腕が容赦なく振るわれたのでございます。
「ゲハッ!」
モヒカン男の喉元に叩き込まれたのは二八郎の豪腕でございました。ウエスタン・ラリアットと呼ばれるプロレス技ですが、単純な技だけに豪腕から繰り出されたときの威力は本物。モヒカン男は泡を吹いて吹っ飛ばされたのでございます。
「あ、兄貴ぃぃぃぃっ!?」
またしても悲鳴を上げる逆モヒカン男でございましたが、次の瞬間、二八郎の目が己を向いたことに気付いて総毛立ちました。
「ひぁあああああああっ!!」
勝てない。
そう気付いた逆モヒカン男は悲鳴を上げると、いっそ清々しいくらいの潔さで、あっさりと逃げ出したのでございます。
それを見た二八郎、再びガッツポーズをとり、高らかに上げたるは勝利の雄叫び!
「ガオーッ!!」
「二八郎、お疲れなのです」
その二八郎を
「あなた、大丈夫ですの?」
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