第5話 安息日
2月19日日曜日
キョン「なあハルヒ、起きろ...」
ハルヒ「……」
キョン「ハルヒさ~ん~」
ハルヒ「……」
ハルヒ「んん…何よ…?」
キョン「ほら起きて、ウィーン行くぞ!」
7時前にチェックアウトを済ませて昨日予約しておいたタクシーに乗った。本来なら歩くような距離だが、スーツケースが重いので仕方ないだろう。プラハ中央駅には数分で到着した。
予約してある特急が出発するのは8時台なので、かなり時間があった。出発の掲示板にはウィーン、ブダペスト、ブラチスラバなど各国の都市が並んでいる、乗る予定のウィーン行の特急はまだ表示されていないようだ。少し早かったかと思ったが、まあ良いだろう。なにしろ時間があったのでコンコースにあるレストランへ入り軽食を摂った。
その特急が掲示板に現れたのは8時を過ぎてからのことだった。同じ列車に乗るであろう人々が駆け、スーツケースを引き轟音を立ててゆく。出発ホームでは、日本のように何号車がどこに停車するのかは分からず、何の表記もなかった。仕方ないのでインド人の修学旅行生やフランス・イギリスなどのツアー旅行の団体客に混じりながらホームの中央に立って電車を待った。
キョン「ヨーロッパって案内表示がないのか?これは初見殺しだな…」
ハルヒ「ホームに停車の表示を出すとそこに人が溜まるとか、あとは様々な国が乗り入れるから列車によって規格が異なるのもあるんじゃない?むしろ日本の方が珍しいと思うわ。」
列車が到着すると同時に、入口に溜まる乗客に交じり車内へ入った。席はなかなかに快適で、スーツケース専用のスペースもあった。
初めはチェコの広大な農業地帯を駆けていたが、だんだんと雪が増えていった。むしろつい最近まで市街地でも雪が降っていたくらいらしい。そして昼飯に買った肉サンドを食べた。パンの部分を食べ終わった頃に列車が停車したのはチェコ東部の都市であるブルノだ。
ハルヒ「Brnoって発音できる? ロシア語勢のあんたの方がこういうの得意なんじゃない?」
キョン「いやロシア語にはもっと母音があるし俺が言うとチェコの発音っぽくないぞ。Brrrno!ってなるし、ロシア出身の教授になんかユダヤ人っぽいっていわれたことがあるぞ。」キョン「Strrrč prrrst skrrrz krrrk!」
ハルヒ「あんたの発音面白すぎっていうか日本語話者にはかなりキツイわよこの文章…。どういう意味?」
キョン「チェコの早口言葉で指をノドに突っ込めっていう意味な。あとVlk zmrrrzl, zhltl hrrrst zrrrn!っていうのもあるぞ。」
ブルノを出発して、国境を越えてチェコからオーストリアに入ると車内のアナウンスがチェコ語+英語からドイツ語+英語に切り替わった。各国訛りの英語がまた良い旅情を醸し出してくれる。かつては東西冷戦の最前線の一つだっただろうオーストリア・スロバキア国境まであと数メートルに迫った列車は、進行方向を南西に変えてドナウ川を越えてすぐウィーンに到着した。
Wien Hauptbahnhof駅、ウィーン中央駅は真新しかった。それもそのはず、この駅は元々ウィーン南駅だったのを、分散している市内のターミナル駅を集約させるべく再開発した駅なのだ。
待ち合わせの人々の間を抜け、コンコースの中を移動する。スーツケースを引きながら中央駅を出てタクシーを拾い、午後の静かな街を3㎞程走りホテルへ向かった。ホテルはパリで泊まったのと同じ系列で、ウィーン西駅の近くにあった。
ハルヒ「何かパリと部屋が変わんないわね。」
荷物を置いて少し休憩し、その間スマホをコンセントに取り付けたアダプターに接続して充電する。
ハルヒ「ところで、何かを忘れているんじゃないかしら? ちょっとヨハン?」
キョン「ジョンのドイツ語バージョンにしてもそれはないだろ。何だ?荷物が何か足りなかったか?」
ハルヒ「どうやら説明しなきゃいけないようね…。」
ハルヒ「えーっとね、」
ハルヒ「オーストリアでは日曜は店は営業してはいけないのね。要は安息日ってやつね。アンダスターン?」
キョン「それで?」
ハルヒ「マックすら閉じてるのよ。初めてウィーンに来た頃は色々大変だったわ…。」
キョン「すなわち食糧問題が発生していると言い出すつもりか?」
ハルヒ「もちろん言い出すつもりよ。どうしたら良いか分かる?」
キョン「分からん。抜け穴でもあるのか?」
ハルヒ「5㎞先に唯一営業しているスーパーがあるの。とりあえずそこに行きましょ。」
キョン「で、何で行くんだ?」
充分にバッテリーを充電しないまま部屋を飛び出して外へと出た。もし一人だけでウィーンに来たならば食糧問題は悪化の一途をたどる一方であっただろう。やはり現地事情に通じている人がいるのはありがたい。
トラムを横目に南へ移動して地下鉄の駅へと向かった。地下鉄の入口は分かりやすく日本と大差はないようだ。しかしここからが大問題なのだ。
キョン「どうやって中に入るんだ?」
ハルヒ「ここで券を買うの。」
キョン「とりあえずEnglishにしてっと。」
キョン「今回は一番左上の1 trip at the full priceってやつでいいのか?」
ハルヒ「うんそれでいいのよ。今日は時間が遅いし24hours ticketじゃなくて良いと思うわ。」
ハルヒ「で、どうやって入るか分かる?」
キョン「この機械でパッチン!するっぽいな。刻印機か?」
ハルヒ「あんたにしては珍しく大正解ね。ほら早く行くわよ。」
キョン「それは余計だが、こんなガバガバで採算とれるのか?」
ここに切符を差し込んで切符の使用開始時刻を刻印するのだが、どうやらウィーン市民は切符を買わずに入場している人も多いようだ。切符を買っている間に何人かが駅構内へと消えていった。
ハルヒ「ウィーン市民は買わないで入っている人も結構いるけど、金曜夜とかには必ず抜き打ち検査があるからズルはダメよ。ヨハネスさんや。」
地下鉄で数駅移動し、ウィーン中心部で下車して数分歩いたところにそのスーパーはあった。ウィーン市街地のまさに中心部にあり、周囲には王宮やオペラハウスなどがある。日曜営業を謳い文句にしているそのスーパーは、日曜に食料品を求めて来店する市民でごった返していた。
お土産で頼まれていた高級チョコレートを買い物かごに積み上げながら今日の夕飯を何にしようか考えた。
ハルヒ「ほらLindtのチョコなんか良いんじゃない?日本だとかなり高くなっちゃうでしょ。それにここで買えないものは専門店で買えるわよ。」
キョン「まあお土産は買うにしても、何を夜にしようか?」
ハルヒ「折角だし、とりあえず日本では食べられないもので良いんじゃない?」
ウィーンっぽいものにしようかと迷いながらも結局チョコケーキを選んだ。他には黒パンなど、とりあえず日本ではあまり手に入らないものを中心にカゴへ入れていった。
レジは左から右へとどんどん流れていく。日本のようにビニール袋やカバンへと詰めるスペースはなく、次々と会計が進むためレジの端のわずかなスペースで急いでリュックサックへ詰め込んだ。
長居したつもりだったが20分でミッションコンプリートとなった。観光するところが閉まっていることもあり時間が余ったため宿まで歩くことにした。
ハルヒ「冬ってこともあるけど、毎週日曜は閑散としてるのよね。もう夕方だしウィーン市民は家の中にいるのよ。」
キョン「なんか通りの名前にgasseって多くないか?」
ハルヒ「何故かウィーンだと通りのことをgasseって言うらしいのよね。ドイツだとstreetに当たるstraßeが多いんだけどこっちだと大きい通りでもgasseって言ったりするらしいわよ。」
部屋へと戻り休むことにした。何しろ早朝から移動してきたので少し疲れていた。
キョン「ハルヒ、一緒に寝ないか?」
ハルヒ「き急にな何言ってるの?あたしにも用意ってものが…」
キョン「用意なんか要らないだろ。ただの昼寝だぞ。」
ハルヒ「もう…分かったわよ。ほら上着脱ぎなさい。」
キョン「ハルヒ、ポニーテールにしてくれないか?」
ハルヒ「相変わらずあんたポニテ好きね…。」
キョン「魅力度36%増しだ。よく似合ってて可愛いぞ。」
ハルヒ「バカ…。」
~~~~
ハルヒ「ふふ... キョンったらこんなに大きくしちゃって…」
ハルヒ「えっちしたい?」
キョン「女の子がそういうこと言うんじゃありません。」
ハルヒ「本当はしたいんでしょ?」
キョン「まあ…ハルヒとなら…」
ハルヒ「なあにその言い方は?」
キョン「ハルヒさんでお願いします!」
ハルヒ「んもーキョンったらかわいいんだから…」
キョン「なあハルヒ、」
ハルヒ「なあに?」
~~
ハルヒ「ちょ… キョンっ いきなり動かないでよ」
キョン「こんなに濡らして準備万端のくせになに言ってるんだ?」
ハルヒ「あっあたしのヴァージン貰っといて感謝の一言も無いわけ? んんっ…」
キョン「ありがとう…。 マジで嬉しい…。」
ハルヒ「ふふっ当然ね!」
~
ハルヒ「バカっ…! キョンなんかのであたしがっ…」
キョン「ハルヒはいつまでもつかな? これでも大きい方だと思うぞ?」
ハルヒ「ちょっとキョン! もうイキそうなんじゃないでしょうね?今イッたら死刑だからね!」
キョン「先にイキそうになっているのは誰かな?」
ハルヒ「ああっ ダメっ… もうイッちゃうっ…!」
キョン「あっ…もう駄目だ」
ハルヒ「一緒にイこ…?」
キョン「中に出すぞ…!」
ハルヒ「っ… 熱いっ… キョンのが…!」
ハルヒ「んんっ…」
ハルヒ「あ… 溢れ出ちゃう… キョンのせーえき…」
ハルヒ「だいすき…。」
キョン「俺もだ。」
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