第2話 再会 ハルヒside

2月16日木曜日

あたしは試験と格闘していた。流石ウィーン大学というべきか学問の質も試験の内容もレベルが高いわね…。特に論述の試験が難しいわ。でも今日頑張ればキョンに会えると思うと不思議と頑張れるわ。


~~~


 あたしは去年の春交換留学生に選ばれたの。ただ第二希望のウィーンになったのが少し残念だわ。1年生の時、第二外国語を選ぶときキョンと有希はロシア語を選んだけどあたしはドイツ語にしたの。高校で世界史を選択してから西ヨーロッパに興味があったからなんだけどね。キョンと有希はロシア語選択で別の授業になっちゃたけど、同じ学科でほとんど講義も同じだしまあいいかなって。

 ドイツ語を選んでからは話せるようにしっかり勉強したわ。あたしたちの学科は語学に力を入れている人がほとんどいないのはなんでかしら?放っておいたらキョンもそうなりそうだったから一緒に自由科目の英語の授業を履修したり、TOEFLを受けたりしたわ。少しはあいつなりに努力してるみたいなの。英語のレベル別のクラスも上がってきたみたいだし、ロシア語の試験はB評価だったみたい。

 ちょうど1年ぐらい前かしら、ドイツ語の授業の時に先生が言ってた交換留学生という制度が気になってすぐに申し込んだのよ。そうしたら数回試験と面接があって、成績が2番目だったあたしはウィーン大学に1年間留学することになったの。急なことだったけどキョンはあたしの決断を受け入れてくれたわ。

 出発する日、団員全員で出迎えに来てくれたのは嬉しかったな…。

 大学にはすぐに慣れたし、ウィーンはパリとかと違ってテロもないし平和で暮らしやすいし、週末にはドイツやチェコ、イタリアに出掛けたりして楽しかったわ。でもみんなに会えなくて少し寂しい。一番会いたいのはキョンで次に有希とみくるちゃんね。今はキョンの胸に飛び込んで思いっきり甘えたいわ。文句を言いながらもあたしについてきてくれたあいつのことが忘れられないのよ...。なぜかあいつのことを考えるとドキドキしちゃう。

キョンがあの電話をしてきたのは秋ごろだったかしら?

 prrrr...

ハルヒ(キョンから?何かしら?)

キョン「ハルヒ、急なんだけどな」

ハルヒ「何よ」(ドキドキしちゃうじゃないの)

キョン「俺ウィーンに行くことになったんだ」

ハルヒ「えっ」(やったわ!キョンと会える!2人っきりになるチャンスじゃないの!)

キョン「2月に10日かけてプラハ、次にウィーン、最後にブダペストに行く予定なんだ」

ハルヒ「あたしは2月17日以降なら大丈夫だけど、いつウィーンに来るの?」

キョン「16日にプラハに到着で、19日から22日朝までウィーンにいるぞ」

ハルヒ「そうなの…」

キョン「ウィーン中央駅集合ってのはどうだ?」

ハルヒ「…」(どうしよう…少しでもキョンと一緒にいたい…)

ハルヒ「あんたが良ければ、一緒に旅行して回りたいと思ったんだけど、どう?」

キョン「ああ、俺は構わないぞ。」

ハルヒ「まだ冬までは時間あるから変更できるし、2人の方が1人あたりホテルも安くつくでしょ。」(キョンと一緒に泊まるって…恥ずかしくて顔から火が出そうだわ)

キョン「そうだな。じゃあそうするよ。」

ハルヒ「楽しみにしておくわ。」

キョン「またな」

学生 「今話してたのって彼氏?」

ハルヒ「そうよ。」

学生 「なんて話してたの?」

ハルヒ「今度2人で旅行するのよ!楽しみだわ。」

ハルヒ(海外をいいことにキョンは彼氏っていう設定になってるのは死んでも言えないわ…)

ハルヒ(あたしったらなんてこと言ってんのよ…。キョンと10日近くも二人っきりで過ごすなんてどうかしちゃいそうだわ…)


~~~


 試験が全て終わったのは夕方の暮れのころだった。あたしは3日遅れのバレンタインでキョンに食べてもらうために、足早に大学からアパートに帰ってチョコケーキを作っていた。Lindtのチョコを使っているし味には自信あるわよ。

 キョンから電話がかかってきたのは夜の8時位だったかな。

prrr…

ハルヒ「連絡遅かったじゃない。無事にプラハに着いたの?」

キョン「ああ、ハルヒ、俺今パリにいるんだ。」

ハルヒ「なんですって?プラハに着いたんじゃなかったの?」

キョン「色々と問題が発生してな、パリでの飛行機の乗り継ぎが上手くいかなかったんだよ。

明日の朝にプラハの空港に着く予定になった。」

ハルヒ「どっちにしろあたしは今日まで試験だったから、明日の朝プラハに着くのは変わりないわよ。集合場所と時間はどうするの?」

キョン「そのまま駅集合で良いと思うぞ。時間も問題ないしな。」

ハルヒ「また明日ね。」

あたしはドキドキしていた。半年ぶりにキョンに会えると思うと胸が熱くなるの。

なんでかしら、なんだかんだ言って文句を言いながらもあたしについてきてくれるあいつが恋しいのよ。

明日は早いし結局その日は早く寝たわ。


2月17日金曜日

 少し可愛いい服を着てみたわ。あいつは似合ってるって言ってくれるかしら? 髪型をポニーテールにして、昨日作ったチョコケーキを持ってから部屋の鍵を閉める。アパートを6時前に出発してウィーン中央駅に向かったわ。11時に駅集合だから6時半に出発の特急に乗らないといけないのよ。

 早朝ということもあって、元々ウィーン南駅だったのを改良して3年前に完成したこの駅にはまだ人は少なかった。

 何回か乗ったお馴染みの特急列車に乗り込んでから朝食にしたわ。朝が早すぎて家で食べる気にはならないわね。特急の中では特に何もしてないわ。その時のあたしは、手元のスマホを眺めながらいつキョンに告白しようか考えているので精一杯だったんだもの。あたしはキョンのことが好き。大好きなのよ。今回を逃せばあいつに半年後まで会えないんだから、プラハかウィーンであたしの気持ちを伝えるってのは決まってたの。ブダペストまで延ばす気は無いわ。その日にチャンスを逃したら半年は機会がないんだもの。絶対にブダペストは恋人として訪れたいわね。頑張れ、あたし。

 10時40分を過ぎて特急はようやくプラハに到着したわ。席もまばらな車内を出口に急ぐ。なんでかしら、あいつの顔が見えたら涙が出てきちゃったわ。

 あたしはドアが開くと同時にキョンに向かって走っていった。

ハルヒ「キョーン!」

キョン「ハルヒ!」

ハルヒ「半年ぶりね。」

キョン「大丈夫か?」

ハルヒは涙を堪えているようだった。

ハルヒ「べっ、別に寂しくなんか無かったんだからねっ。」

キョン「泣きたいなら無理しなくても良いんだぞ?」

俺はハルヒをそっと抱きしめた。

ハルヒ「キョン、あたし……」

ハルヒ「今は半年振りにキョンに会えて嬉しいのよ! 団長直々の出迎えに感謝なさい。」

キョン「ありがとな。」

ハルヒ「あと、これ…貰ってくれない?」

キョン「?」

ハルヒ「3日遅れのバレンタインよ。ありがたく受け取りなさい!」


キョン「ありがとよ。」

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