第四盗 馬鹿【鉛弾】
会議を終え、各々が荷造りを済ませ小型船が停めてある第三番倉庫に向かう。
小型船は大体四人から五人が定員となる。今回はヴァレンの決めた班で三船に別れて乗る事になった。
そして、倉庫に響く二人の声。
「はぁ?何で貴方となのよ!」
「そりゃあ、こっちのセリフだ!」
クロエとカキツバである。その声が聞こえるが二人を残し、皆黙々と出発の準備をしている。顔を合わせれば喧嘩になる二人には、だいたいの団員は皆慣れている。
だが、慣れていない新人団員もいる。
「ふ、二人とも、仲よくスッ!」
二人の間に入り止めようとするリーフ。しかしながら、身長的に旗から見れば小柄なリーフはピョンピョン跳ねているだけに見える。
今回は十五人だった為、五人で班を割った。
第一班、ゼノ、ヴァレン、リーフ、クロエ、カキツバの五人である。
本来は仲の悪い二人をバラそうとしたヴァレンだったが、クロエとカキツバがゼノとヴァレンとがいいと言い。
それを聞いた他の団員もじゃあ、俺コイツととか言い出し、現状が作り出された。はぁ、と溜め息を吐き、別に俺が考えなくてもよかったんじゃないか?と思うヴァレン。
「はっはは、ヴァレちゃん溜め息ばっか吐いてると幸運が逃げちゃうよ?」
「なら、変われ」
「やーだ」
頭らしい事をヴァレンに任せっきりのゼノは、ジュースとタブレットを手に座席で優雅に寛いでいる。ゴミを見るような目でゼノを睨むが、ニヤニヤと虫酸が走る笑みをするばりで手を貸そうとはしない。
「へー……」
「どうした?」
「惑星クリスタに『聖星の第三皇女、訪問!』だってさ」
「……面倒な」
「だねー、ずらずら護衛の騎士様方を連れて来るんだろうね。
いつも通り不機嫌そうな表情で話を聞きながらもヴァレンは律儀に相づちを打つ。それに対し薄っぺらい笑い顔で話すゼノが言った聖星とは惑星内で一二を争う
境界警備隊は星間の揉め事を取り締まる、どこの国でもある警備が巨大化した組織で、ゼノの予想では聖星の皇女の護衛に付くことが考えられる。
また、観測官はゼノ達盗賊と似て非なるもので、惑星観測団と名乗っている。どこの星にも属さないが盗賊とは違い進んで悪事を働く組織では無く、あくまで観測が第一の信条を持つ。時にはその記録した情報を星に売却するので惑星公認の組織だ。
だが、観測第一が信条の為、些細ないざこざが起き邪魔をするなら排除の場合もあり。表沙汰で悪事はしないが、裏の者なら
「ヴァレンさん、第二第三第四、準備整いやした!」
「そうか、なら順に出立してくれ」
「分かりやした!では」
「あぁ」
横に寝そべる
「なんで、私でなくヴァレちゃんに……!?」
「そう思うなら、今すぐ立って仕事をしろ」
ちょと衝撃を受けたゼノに目を合わせず、冷徹に準備品の確認をとる。そのヴァレンにゼノは何を思ったかはたまた気が振れたのか背後から飛び付く。
「っ!?」
「ヴァレンよ、私そんなに威厳ないのかね?」
「おい、離れろ……!」
「口調の問題かね?なら変えれば……、いや先ずは形から入るべきか?」
ヴァレンはまた始まったと、短くため息を吐き捨てる。
抱きついた腕は固く引き剥がそうとしても全く動かない。遠距離戦闘を得意とする術者であるヴァレンだが人並みの力はある、それでもこの腕はびくともしないのだ。
魔法や魔術を使っている訳では無く、素の状態でこれなのだ。相変わらず化け物じみている、そうヴァレンは思う。
「ヴァレンは私の事が好きかね?私は無論大好きだがね」
「早く退け、気色悪い」
「是非と答えて欲しいのだが……あぁそうだ。親睦を深める為、昔の様に今夜一緒に寝るかね?」
「断る!」
「何故そう嫌がるのだね。君が小さかった時はよく一緒に寝ていたではないか」
「いつの話をしている、歳を考えろ」
「なに百も千もそう大差はない」
それはお前にとってだろう、と年齢不詳のゼノを睨む。数えるのが面倒になったとゼノは言うが、ヴァレンが子供の時から全くこの男の姿が変わっていない。
そして、今も昔もたまにこの様に脈略のない事を唐突に言っているのだ。その時は口調もバラバラだ。
だが、ゼノを知る者からすればこれでもマシになったのだ。昔はもっと悪い方向に酷かった。
「相変わらずヴァレンは色白だがね、あぁ美味しそう……腕一本貰ってもいいかね?」
「いいわけあるか!」
爛々と輝いた目で腕を食べよとする、この馬鹿を止める手段は今のところ一つだ。
空間魔法で召喚した銃の銃口をゼノの額に突きつけ引き金を躊躇せずヴァレンは引いた。
盗賊団【白鯨】 紫蘇テン @9994
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