第110話
翔子は声を堪えながら、葉月に身体を弄ばれ続ける。自らの嬌声を押入れに隠れているはずの茂木に聞かれたくなかった。葉月に悟られぬように、押入れの方に目をやる事すらしなかった。
葉月の行為は徐々にエスカレートし、翔子の服の中まで手が入り込む。翔子の身体は葉月の指先に悲しい程に反応し、脳に快感を伝えてしまう。
本当は声を上げて茂木に助けを求めたかった。姉のように慕っていた葉月からの性的な悪戯をやめさせて欲しかった。しかし葉月を拘束する事に失敗した時のリスクは計り知れない。拓海も茂木も殺され、翔子は二度と村から出る機会を奪われるであろう。母親を拘束して家に潜伏するという作戦すら、悩みに悩み抜いた末の決断で実行に移ったのだ。リスクを冒す事を考えれば、今は耐えるしかない。
これは世話になった村を裏切る罰なのだと翔子は思った。
葉月の指が、翔子の一番敏感な部分に触れる。
翔子は思わず甲高い声を漏らした。そして覚悟を決めて呟く。
「……大丈夫」
それは今にも押入れから飛び出してくるかもしれない茂木へのメッセージだった。自分は大丈夫だから、そのまま隠れていろと伝えたかったのだ。
葉月はそれを行為への同意と捉えたのか、翔子への責めを更に激しくした。
覚悟を決めた翔子はもう声を抑えなかった。葉月の責めを一身に受け、何度も嬌声をあげた。
その頃茂木は、翔子の予想通りに押入れの中で身を潜めていた。葉月が翔子を押し倒した時、茂木はいざとなれば助けに入ろうと身構える。そして襖に指をかけた時、飛び出そうとした茂木を翔子の言葉が踏み止まらせた。茂木は翔子のメッセージをすぐに理解する事ができた。だからせめて翔子の嬌声を聞かぬように、耳を強く塞ぐ。しかし、葉月が不意に襖を開けるのではないかと思うと、恐怖心と不安で耳から手を離し聞き耳を立てずにはいられない。耳に入る翔子の嬌声と、得体の知れぬ水音、そして葉月の荒い息遣いに、茂木の罪悪感が激しく刺激された。
茂木には何もできなかった。
ただ外から聞こえる物音に聞き耳を立てる意外は何も。
「あら、どうしたの?」
不意に、目から涙が溢れ出した翔子に葉月は尋ねる。翔子はあまりの恥辱に無意識に泣いていたのだ。せめてあの香炉があれば、翔子の恥辱さえも快楽に変えてくれただろうに、葉月は自らの支配欲を満たすために、あえて薬を使わずに翔子を弄んでいた。
「ねぇ、私、葉月ちゃんのものになるから、今日はもう……」
言葉の途中で葉月が指を動かしたため、翔子は最後まで言い切る事ができなかった。代わりに熱い吐息が漏れる。
「ダーメ」
葉月はニンマリと笑い、まるで罰だと言わんばかりに、その後も激しく翔子を責め続ける。
やがて夜が訪れ、部屋が闇に包まれると、葉月の愛撫が止んだ。翔子はもう何度絶頂を迎えたのか数えてはいなかった。
ようやく終わったのかと思い、翔子が涙と唾液にまみれた顔を手の甲で弱々しく拭うと、葉月が闇の中で目を光らせながら服を脱ぎ始めたのが見えた。
「あ……やだ……」
翔子は震えながら逃げようとしたが、足腰が立たずに這ってしか動けなかった。その上から葉月がのしかかり、肌を絡める。
その後も数時間、闇の中で翔子は葉月に犯され続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます