第64話
布団への侵入者は達山の浴衣の隙間から手を入れて達山の脚を弄る。そして空いた手で胸元をはだけさせ、甘えるように胸元に唇で吸い付く。
布団が盛り上がり、侵入者の頭が達山の目に映る。布団の隙間から覗く艶やかな黒髪からは、香の煙とは違う柑橘類の爽やかな香りがした。
侵入者は焦らすように、唇と手で優しく達山の身体を弄り続ける。達山の痩せた胸部を、侵入者の舌から垂れた唾液が伝う。そして侵入者が達山の胸から顔を上げた時、達山は驚愕した。
そこにいたのはアヤではなく、娘の美咲であった。
驚いた達山は呟くように美咲の名を呼ぶ。しかし、美咲は目を細め微笑んだかと思うと、達山への愛撫を再開した。
美咲を止めようとする達山の意思とは裏腹に、香のせいか男の性か、股間はみるみるうちに熱くなる。美咲はそれを楽しむかのように、達山の身体に舌を這わせる。そして、はだけた達山の胸元に、身体を擦り付けてきた。押し付けられた美咲の肌から、直に体温が伝わってくる。美咲は裸であった。
布団から頭を出した美咲の顔が、達山の目の前に現れる。闇の中にうっすらと見える美咲の目は、正気の目ではなかった。まるで酔っているかのようにトロリと蕩けた目をしており、そして気のせいか、目の奥で何かが蠢いているように見えた。
再び美咲の名を呼ぼうとした達山の唇に美咲は吸い付く。そして舌をねじ込み、達山の口内を蹂躙する。そのキスは荒々しく、決して慣れているようなキスには思えなかったが、まるで発情した娼婦のような、快楽を貪るための淫らなキスであった。
達山の唇を貪る今の美咲は、先程達山に酌をしてくれた美咲とはまるで別人のようだ。達山はそのように意識して見ていたわけではなかったが、無邪気な笑みを見せていた美咲は、明らかに生娘にしか見えなかった。もちろん達山は女性は見かけによらない事は知っている。しかし、美咲のこの豹変ぶりには大きなショックを受ける。
アルコールによる酔いは覚め、混乱と快楽が達山の頭を支配しようとしていた。
ぬるり
達山の腿に湿った感触が当たった。
美咲は達山の口から唇を離し、熱い吐息を吐き出すと、達山の腰を跨ぎ上体を上げる。
布団が捲りあがり、二人の肌が空気に晒された。闇の中に、美咲の白く細い裸体が現れる。その姿は美しくも、達山にはまるで悪魔のように映った。
美しく咲くと書いて、美咲。
咲いたのは、人を狂わすケシの花。
※カクヨム運営様の御指導の元、描写を変更しております。再度御指摘があった場合は早急に変更致します。
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