第53話

 その村の、女子の唇ケシの花、吸えば二度とは常世に戻れぬ。


 肌は白魚、声は鶯、つぶりの黒髪烏の濡れ羽。


 げに美しきその姿。


 しかしその身は人にはあらず。


 悪鬼羅刹も近寄らぬ。


 命惜しけりゃ抱いてはならぬ。


 命惜しけりゃ触れてはならぬ。


 明日の日の目を見たければ、灯籠村には近寄らず、全て忘れて田畑を耕せ。


 今日も阿呆が一人死ぬ。


 色香に誘われ一人死ぬ。


 裂かれた腹も、ケシの花。


 見るも無惨な赤一重。


〜薩摩に伝わる民謡の一節より〜

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