第25話

 歩み寄ってきた翔子は拓海の頭を両手で抱えるように引き寄せて、唇を合わせた。そして幼子が母親の乳を求めるようにむしゃぶりつく。


 暗い室内に、翔子が拓海の唇を吸う音だけが響く。

 香炉から出る匂いのせいであろうか、唇を吸われただけで拓海の下半身は更に熱くなってゆく。


 唇をこじ開けて翔子の舌が口内へと侵入してくる。

 自らの舌に翔子の舌が触れた時、拓海の脳に痺れるような快感が走り抜けた。

 快感に打ち震える拓海に構わず、翔子は休むことなく拓海の口内を蹂躙し続ける。その激しさは、今朝温泉で交したキスの比では無かった。舌が絡まる度に快感は拓海の体内を駆け巡り、理性は深い意識の底へと消えてゆく————


 ☆


 長い交わりの後。

 翔子の中に精を放ち終えた拓海に、うっとりとした表情の翔子が囁く。


「大丈夫だよ」


 何が大丈夫だと言うのであろうか。拓海は思考しようとしたが、脳は働いてはくれなかった。

 すると、虚ろであった翔子の目の奥に、一瞬だけ理性の光が戻った。


「……ごめんね」


 何を意味するかわからないその謝罪の言葉は、快楽の坩堝の中にありながら、深い悲しみが込められており、その声を聞いた一瞬だけ、拓海はあの日涙を流した桜子の事を思い出した。


 しかし、香炉から放たれる匂いが、理性を取り戻しかけた拓海を快楽の中へと引きずりこむ。一度精を放った拓海の股間は、翔子の中で再び固くなり、更なる快感を求める。それは翔子も同じようであった。先程一瞬戻った理性の光は消え、今はまた快楽に溺れた蕩けきった表情へと戻っている。


 それからも二人はタガが外れたかのように互いを求め続け、結局拓海は幾度も精を放ち、翔子は数え切れぬほどの絶頂を味わった。







※このページはカクヨム運営様の御指導により、性描写を一部カットし、マイルドなものに訂正しております。

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