第14話
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「で、お前は、結局誰の事が一番大切なんだ?」
師村。
いまはね、それどころじゃないの。
他に重要な議題があるのよ。
異世界の生首殺人鬼が逃亡してな。
って、
眼が合った途端に、琥珀さまは、両目を瞑って、胸の前で手を組んで祈るような表情を浮かべてる。
あぁ~、もう可愛いなぁ。
河童小娘は、河童小娘で、いまにも泣き出しそうな、不安気な顔してるし。
これも、これで可愛い。
稟。
いつも四号で良いって言いつつ、そのジェスチャーはなに?
ぼくを選ばないきゃ、殺すよって意味なのでは?
鬼だ。
この子は、やっぱり鬼なんだ。
ピンクちゃん。
あの、その、ねえ。
眼。
眼に瞳が出現してるよ。
きらきらとした澄んだ瞳が、ボクをじっと見詰めてる。
ああああああ
なんか揺らぐ。
アンジェリカ。
そんな、どアップで、ちょっぴり恥ずかしそうにボクを凝視しないで。
手が震えてる。
アンジェリカのイレズミだらけの手が、カタカタカタって震えてる。
不安?
それとも期待!?
「で、誰」
お前は鬼か。
この状況で、誰かを選べる訳ないだろう。
誰を選んでも、誰かが傷つくんだよ。
「あ~っ、の⋯⋯、その。みんな」
「「「「「みんな!?」」」」」
「それはねえよな
師村が呆れたように呟いた。
「うん、ないない」
「オレは、河童ちゃん一択」
「河童ちゃんって、誰? って、ああ、このおかっぱの子か」
中元⋯⋯
「本当に煮え切らないよな。そんな八方美人だから、お前。薫ちゃんに振られるのよ」
「「「「「薫ちゃん!?」」」」」
いま、その名前を出すかよ!!
「薫ちゃんとは、誰じゃ!!」
いきり立った琥珀さまが、師村に詰め寄った。
「暁人の元カノ」
「元カノ!? 元カノじゃと」
「アタイがいるのに、まだ、その女に未練があるの!?」
「暁人さまヒドい」
「桐生さん。こんな事は言いたくありませんが。いまの桐生さんと、この世界の女性とでは、肉体的な釣り合いが取れません⋯⋯」
「良いのよローレンス・暁人。――あたし、あなたが、その人を忘れるまで待ちます」
あああ、もう、話がややこしくなった。
「なんで薫の名前を出すの」
「薫!!」
「呼び捨てにした」
「暁人さま~」
「変異が進んだ桐生さんと、その女性との間には、その⋯⋯」
「ローレンス・暁人――」
アンジェリカが、ギュッとボクを抱きしめた。
「いい加減離れよ、ウロコ女!!」
「うるさい刃物女!! あたしとローレンス・暁人の問題に、口出ししないで」
「わらわと暁人どのの問題じゃ」
「アタイを忘れるな!!」
「ぼくも~」
「私も⋯⋯」
勘弁してよ。
ボクが何をした。
こんなの理不尽だ。
不条理だよ。
薫とは、もう一年も前に喧嘩別れしたんだ。
未練なんて無いし。
いままで、思い出すこともなかったのに。
全く師村は、昔から空気を読まないっていうか。
パンパン
と、上樹先輩が手を叩いた。
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