第13話


 ♠



 大変だ。


 大変だ!!


 大変なんだよ!!


 あの変態生首が逃亡した!?

 なんで?

 どうして!?

 ゼニガタの兄貴が大丈夫って言ってたのに、何が起きたのねえ。

 誰か教えてよ。


 って⋯⋯


 琥珀こはくさまが、非常に剣呑けんのんな視線をアンジェリカに向けていた。

 アンジェリカも負けずに、なんだかとても物騒な目つきで琥珀さまを睨んでた。



 あぁぁぁぁ、



 この二人は、本当に仲が悪い。

「なにをしに来たかや」

 琥珀さまが、吐き捨てるように訊いた。

 もっと穏やかに訊きましょうよ琥珀さま。

「あなたには関係のない話よ」

 プンと顔を背けた。

 アンジェリカ。

 ねえ、もっと、友好的に行けないかな。


「夫の暁人どのに用があるなら、妻のわらわに先に話を通してもらおうかの」

「夫!?」

 師村が琥珀さまとボクの顔を交互に見て驚いてる。



 あぁ~、また新たな誤解が。



「嘘ばっかり言わないでよね。ローレンス・暁人あきとが結婚したなら、マルチネットを通じて全異世界を揺るがすニュースになってるわよ」


 ボクって、そんなに有名人なの!?


 アンジェリカがボクの膝の上に乗りながら、勝ち誇ったように琥珀さまを見た。


 いや、ほら、ねえ。


 この状況で、そんな真似をすると⋯⋯

「アンジェずるい」

 ほらりんが反応した。

「アタイも、そんなことされた事無いし!!」

 河童小娘かっぱこむすめの血圧も上がってる。

「そんな真似、オレがさせない!!」

 嘉藤かとう

 お前、何を言って。


 あ~っ、ねえピンクちゃん。

 そんな羨ましそ~な、恨めしそ~な眼を、こっちに向けないでちょうだい。


「人魚だ。人魚だよ、おい和弥かずや

 中元は、中元で、なんか感動してるし。

「暁人。お前と琥珀さんの仲って、どーなってんの?」

 いま、それ重要か師村しむら

「成敗してくれるウロコ女」

「あら、まだ分かってないのね。あなたじゃ私に勝てないわよ。ね~、ローレンス・暁人」

 こてんとボクの肩に頭を乗せて甘えて来た。


 も~~~


 この状況を見て、アンジェリカ!!

「っていうか。お前と彼女たちの関係ってなに?」

 詰め寄るな師村。

 説明が難しいんだ。

「ぼくは、暁人さまの四号さんです」

 稟が元気よく手を挙げた。

「四号?」

「私は五号」

 ピンクちゃんまで⋯⋯

「へっ?」

「このマッチョな稟ちゃんが四号で、こっちのロボットが五号なのかローレンス」

「ロボット!?」

 ピンクちゃんの頭の後ろに



 ガァァァァァァン



 という書き文字が見えた。

 ああ、ショックを受けてる。

「マシキュラン」

「はあ?」

「なに言ってんのローレンス」

「彼女たちの種族は、マシキュランっていうの。ロボット呼ばわりするのは失礼にあたるんだよ」

「いや、でも、これロボットだろ」


 しつこいな中元。


「マシキュラン!!」

 ボクは語気を強めて訂正した。

「マシキュラン?」

「そうマシキュラン」

「で、マシキュランってなに?」

 あぁ~、もう面倒くさいな~

「マシキュランってのはな――」

 何故か嘉藤が説明しだした。

 って、お前、ボクより詳しいんだけど。

 どこで、その知識を仕入れたの。

「へぇ~、マルチバースネットワークってのがあって。それが何、全異世界と、この世界をつなげてるのかよ」

 中元。

 お前も、馴染むの速くない。

 ボクは理解するのも、納得するのも、ずいぶん時間が掛かったってのに。

「嘉藤。お前、どこで、その情報を仕入れたの?」

「こないだコンシェルジュさんにインタビューしたら、丁寧に色々教えてくれたぞ」

 コンシェルジュさん⋯⋯

 守秘義務しゅひぎむって知ってますか。

 なんでもかんでも、ベラベラ一般人に喋ってしまうのは、どーかな~と思うよ。


 ボクは。



 ♠



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