朝目覚めたら小人がいた・・・
第1話 七重の膝を八重に折り
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ボクの名前は
多分、今、この瞬間、世界で最も理不尽な目に
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ボクは土下座をしてた。
いや正確には、土下座を強要されてた。
これって犯罪なんですけど、別世界の人には関係ないみたい。
特に、今、ボクを見下ろしてる小人さん。
「全くけしからん。最近の若い者は云々……」
さっきから同じ事を、何度も何度も繰り返してる、このフリッツ・なんたらかんたら・エーデルワイス六世さんにはね。
「この
知りません。
「かのエーデルワイス公エドモンド・ウィルフレッド・チェスラフ・イジドーロ一世に連なる、いと
いえ、もうこれ以上低くは無理なんですけど。
「頭が高いといっておるのだ、ええい、この無礼者め!!」
ええい、もう、これならどうだ。
ボクは腹這いで寝そべった。
これじゃ土下座じゃなくて、土下寝だよ。
「フン、やれば出来るではないか」
あ、これで良いのね。
ふんずっ
と、フリッツ・なんたらかんたら六世さんが、ボクの頭を踏みつけた。
カッチーン
ボクは跳ね起きた。
見ると、フリッツなんたらかんたら六世さんが、ちょっぴり驚いたような顔をしてた。
やりすぎたかな?
と、そのマスコット人形を想わせるアンバランスにデカい顔に書かれてた。
「ミーたん、やっちゃえ!!」
ミーたんの襟首を掴んでた右手をパッと離した。
「ヤメロォォォォォォ」
ミーたんが
フリッツ六世さんが叫んだ。
熱戦だ。
必死に応戦するフリッツ六世さん。
さっきから尻尾を左右に忙しく振って、獲物を見定めてたミーたん。
ミーたんは、ダメと言われた事は絶対にしない賢い猫さんだ。
爪を立てちゃダメ。
噛みついちゃダメ。
と、あらかじめ言ってあるから、フリッツ六世さんへの攻撃もネコパンチとネコキックのみだ。
両手で抱え込んでネコキック。
間合いを取ってネコパンチ。
身長20センチのフリッツ六世さんと、生後4ヶ月ぐらいのミーたんとのウエイト差はほとんどない。
どっちも1キロあるかないかだ。
「おのれ獣め、成敗してくれる」
腰に差した剣を抜こうとしたので、慌てて止めに入った。
「これは没収です」
「何を申すか馬鹿者め」
「ここで刃物を使うようなら、出て行って貰います」
ボクは管理人の権限を使った。
「おのれェェェェ。こんな獣
フリッツ六世さんが、パンチを繰り出す。
ミーたんが避ける。
キックを打ち込む。
ミーたんジャンプ。
掴み掛かる。
逆に押さえ込まれてネコキックの嵐だ。
あ~、あ~、あ~、あ~
洋服が・・・
お気に入りのオモチャをズタボロにする、ミーたんのフルコース
「おにょれ、獣やるではないか」
フラフラだよ。
「今こそ、いまこそ、我が秘奥技を喰らうがいい」
両手を掲げて。
あ!!
決まったな。
ビシ、
ビシ、
バシ、
ビシ、
バシ、
と、ミーたんのネコパンチが五発連続でクリーンヒットした。
フリッツなんたらかんたら・エーデルワイス六世さんがゆつくりと倒れる。
あ~、こんなシーン映画で見た事があるな。
ノックダウンした主人公のボクサーが必死に立ち上がろうとするだけど、テンカウント食らって負けちゃうんだ。
「ワン、トゥー、スリー、フォー、ファァァィブ、シックスッ、セェブン、エイト、ナァァァァァインッッッッ」
フリッツ六世の眼が、ボクを見た。
「テン!!」
ガクッ、と、力なく倒れ込んだ。
ボクはスチール製の灰皿をゴングの代わりに打ち鳴らした。
「勝者ミーたん」
25にもなって、なにやってんだボクは。
「フフッ」
と、フリッツ六世さんが笑った。
「まこと恐るべきビーステイマーよ」
ビーステイマーって、ボクの事?
「この我が輩を相手に、ここまで
「そ、そうですか」
頭に来たからミーたんをけしかけただけなんですが。
「感心したぞ。その
「え、はあ」
「そなたもだ偉大なる獣よ」
ミーたんが、
「ミャー」
と、返事をした。
もしかして、言葉が通じてるの?
戦った者同士の共感だろうか。
ミーたんがコツンとフリッツ六世さんに頭突きして、その顔をペロペロと舐めた。
「これよさんか。傷に滲みるではないか」
手でふり払う素振りはみせるけど、満更でも無い顔をしてる。
「よし」
「我が
「名前をですか?」
「うむ。お主はこれよりローレンスじゃ。
いえ、ミーたんです。
「おー、よしよし。お主も喜んでおるなアメリアよ」
ミーたんですってば。
「さて、ローレンスよ」
桐生暁人です。
「儂は少し疲れた。風呂を所望する」
「あ~、はいはい。お風呂ですね。すぐに用意します」
「うむ。頼んだぞローレンス」
暁人ですってば。
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