第7話 本文中、一部に大変お見苦しい部分がございます。


 ♠

 


 ボクは悪いとは思いつつも好奇心に勝てず、琥珀様の面頬を自分の顔に付けて声を出してみた。

 あ、確かに声が変わる。

 ボクは結構声が低い方なんだけど、これを付けるともっと深いバリトンボイスに変化する。

 ぼいすちぇんじゃは、どこにも見当たらないのに、こんなに声が変わるなんて先進技術極まれりってやつだ。

「良い物であろう」

 良かった、怒ってない。

「わらわが十四じゅうしの時に討ち取った倶利奔くりほんの首を模して作った逸品ぞ」

「へー、そうなんですか」

 さっきから口にしてる魔式裏とか倶利奔とか、全くなんの事だか理解できない。

 ボクの知らないアニメかマンガのネタなんだろうけど。

「って――」

 ボクは眼を見開いて、生唾を飲み込んだ。

 正直眼を逸らす事が出来なかった。

 ボクの視線の先に琥珀様がいる。

 着物を全部脱ぎ、全裸になった琥珀様が腰に手をやり胸を張って威張っていたのだ。


 ――回想終了――


 小振りだけど形の良い胸に、ツンと上を向いた薄桃色の愛らしい突起。

 剃り落としてるのか元々生えてないのかツルンとした瑞々しい股間まで、バッチリ瞼に焼き付け所でボクは回れ右して背中を向けた。

 当然の事だけど、ボクは上樹先輩の裸をしらない。

 同じ水泳部だったから、水着姿は何度も見てるけど、さすがに裸は見た事が無い。

 先輩と同じぐらいの肩幅に、同じぐらいの背縦で、似たような表情浮かべて股間がツルツルなんて・・・

 もう、もう、もう!!

「何をしておる?」

 気配で琥珀様が首を傾げるのが分かった。

 ボクは胸の動悸を必死に抑えながら言った。

「何でこんな所で脱いでんですか」

「湯浴みをするのに、服を脱がぬ者などおるのか? 他国の慣習は知らぬが、我が国では着衣のまま湯船に浸かる習慣はないぞえ」

 琥珀様の呆れたような物言いに、ボクはカチンと来た。

「服を脱ぐなら更衣室で脱ぐの、眼のやり場に困るじゃないか」

 何か変なこと言ったかな?

 背後で琥珀様が溜息をついた。

「わらわも最初から眼のやり場に困っておったが、そなたが堂々としておるから、それが当たり前なのじゃと思ったのじゃ」

 はぁ!?

「それに、そなたがそうして赤心をさらけ出しておるのに、わらわがそれに応えぬようでは。それこそ女がすたるというものぞ」

 少し恥かし気に琥珀様がそう言った。

 何を言ってるの!?

 赤心?

 意味が分かんない。

 ボクは訳が分からず混乱してるたげですけど。

「それと、これと、何の関係があるんです?」

「……そなた、最初はなからスッポンポンではないか」

 あっ!!

 改めて自分の格好を思い出した。

 プールに飛び込み、そのままお風呂に入ろうと服を脱ぎ捨てたんだった。

 って、ことは・・・

 視線を下げた。


 あぁぁぁぁぁぁぁ・・・


 これも全部見られたのか!?

「さて暁人殿、背中を流してたもれ」

 琥珀様は、ボクの手を取るとバスルームにボクを引き込んだ。



 ♠


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