第10話 店長帰還!

 女神に異世界に飛ばされた召喚されたケーキ屋店長


「ドスッ」


 彼は無事に役目を果たし、自室に床に落とされた。涙を流し店長は喜びの声を上げる


「帰っ…帰ったどお・・・おお、あ?」


 違和感に気付き視線を落とすと店長の手には


    「キラッ」


 日差しに照らされキラリと光る剣が握られていた


「持って来ちゃった・・・・どうしよう…んッッ」


 武器の始末をどうしようと戸惑う、だが直ぐに別の不安が沸き上がった


「日の光・・・・朝ぁ!?!?」


 店長は外を確認すると、お天道様は天高く昇られていた


「そんな…あんなに急いだのに・・・・」


 力が抜け膝から崩れ落ちる店長を追い打ちをかける様に訪問者がインターホンを鳴らした


「ピンポーン♪」


「このタイミングで客ぅ!? ちょっと待ってください!」


 店長は武器をタンスに隠し、訪問者の元まで急いだ。ドアを開けると


「ハローゥ♪良いお昼でぷね~♪」


 訪問者の元気のいい挨拶の中の ”お昼” と言う言葉にグサリときて店長は壁に寄りかかってしまった


「大丈夫ですかなモフニャン氏!ボロボロではないでぷか!?」


 訪問者も店長の様子を見て動揺している様だ


「だ、大丈夫だよボンレス…、どうした?」


 店長は力なく訪問者に応えた。ボンレスとはネットゲームでのこの訪問者の名前である。正確にはボンレス・ラード。ボンレスハムの脂だけ、みたいな意味らしい


「くぷぷ♪どうやらお求めの品は手に入らなかったご様子。そんなモフニャン氏にプレゼントでぷよ!」


 そう言ってボンレスは店長にある物を渡した


「こ、これはリーサル・ファンタジー51!! おまえの分は!?」


 驚く店長にボンレスは豚骨の様にしつこい笑顔で言った


「ちゃーんと確保してるから心配ないでぷよぉ。ひょんな事から2つ手に入ってしまいまして」


「2つ!?良く買えたな!」


 ボンレスは気まずそうに説明した


「実はですねモフニャン氏、それは運良くゆうと氏が予約できたものなのでぷよ」


「ゆうとの…」


「ボク、ゆうと氏のご家族とも知り合いで貰ったでぷよ。でもボクは無事手に入ったから、もしモフニャン氏が買い逃がしてたら渡そうと思いまして」


「そうか…」


「あの、やはり受け取るのは抵抗あるでぷか?」


 店長は力強く立ち上がって、不安げなボンレスに言った


「いいや! しっかり遊ばせてもらうぜ!さっそくプレイを・・・」


「ああ!待つでし!兵糧買ってきたから受け取るでぷ! あ、エナジードリンクはそこの自販機で買ったから良く冷えてるでぷよ」


 店長はお菓子の入った袋を受け取った


「おお、悪いな!」


「プププ。お返しに新作ケーキの試作品をボクに優先的に試食させるデぷよ!」


 ボンレスはそう言い残し帰って行った。店長は受け取った袋の中身を見て苦笑いする


「うわ、どれも味濃いヤツばっか。俺へじゃなくて自分用に買ったヤツだろこれ」


 ボンレスに心配させてしまったらしい。店長はさっそく貰ったゲームを起動した


「プレイヤー名を入力してください」


「名前はもう決まってるんだけど…今作は苗字も入れるのか。どうしようかな、なにかヤツらしい苗字は・・・」


 店長は苗字を考えた。今も、はるか彼方かなたの異世界で戦い続けているであろう友を思いながら


彼方かなた・ゆうと でよろしいですか?」


「はい。っと、一緒に遊ぼうぜ、ゆうと!」






数か月後、俺はまだ…





「勇者よ一大事なのです!」


「またか!これで何度目だ!?」


 …女神に良い様に使われていた


「それでは頑張ってください最速の勇者よ」


「くそう!意地でも早く帰ってやるからなぁあ!!」

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最速勇者は早く帰りたい 軽見 歩 @karumi

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