3.会えない君と心霊ラブコメ

1.プロローグ

1.



 一目惚れは死者による選択である。


                 (小泉八雲「夢の本から」より/河島弘美訳)



                  *



 幽霊と人間との恋愛譚というのは思いのほか世にあふれている。

 

 あの世の存在である彼らと、この世の存在である人間との出会い――。


 それはときに凄惨な怪談だったり、本来住む世界が異なる故の悲劇であったり、逆に境界を越えた心温まる奇跡のラブストーリーであったり、またほんの少しの不思議をともなった淡いすれ違いの瞬間であったりする。


 それらの多くはつくり事、フィクションの中での出来事であるが、いや、規模の大小こそあれ、人間一生に一度は理屈では説明できない不可思議な場面に遭遇しているものなのだ――と、そのように言う人もいる。その判断の是非は保留するにしても、とかく死者との交流を念頭に置いた話は古今絶えることがない。


 真偽虚実をひとまず別にして、そういった物語はそうめずらしいものではない。



                  *



 死者と生者の運命を繋ぐ劇的でロマンチックなドラマ――、それ自体はとても素晴らしいものであるし広く支持を得ているのも納得のいくところだ。


 ただそれに気づくかどうかとなると、これはまた別個の問題なのである。



                  *



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