2.
それにしても〝妖怪屋敷〟である。
〝幽霊アパート〟でも〝おばけ屋敷〟でもましてや〝ゴーストハウス〟でもなく、〝妖怪屋敷〟なのである。実に古めいた呼び名であると思う。情緒があると言ってもよいかと思うが、このアパートがそう呼ばれるようになるにはそれなりの所以があるということであった。
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僕はここいらの土地に馴染みがないために詳しくは知らなかったのだが、〝妖怪屋敷〟の評判は地元近辺では知られた話であるらしかった。
僕が通うことになった高校もそのアパートと同じエリアにあり(そのための下宿先であったので当然だが)、徒歩圏内にあるということもあって学校内でも〝妖怪屋敷〟のうわさは多々聞くことがあった。
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高校に入学してすぐの頃。
新学期にクラスで通学方法の話題になった際、なんとなしに下宿先の話をしたところ、
「えっ、あのアパートに……?」
「マジでか」
と、奇異と驚愕と羨望との入り混じった眼差しを向けられたのは記憶に新しい。
それで興味を引いたものと思い怪異の起こる宅地の何たるかを語ったのだが、いささか話が専門的になり過ぎたのか、明くる日から教室で話しかけられることがめっきりなくなってしまった。難しいものである。
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