俺とあいつはギャルゲーマー!? ②
「あ...。」
「あ...。」
その瞬間抑えきれない驚きと、見覚えのあるその容姿に、俺は釘付けになってしまった。
「お、おにぃ!?」
「あ、
中から出てきたのは俺の妹の葵であった。
「なんで葵がこんな所に居るんだよ!...って、その袋は...」
「なっ!!わあああ!!な、な、な、ななんでもないよ!!!」
葵は手に持っていたその袋の存在を思い出すと目にもとまらぬ速さで背中に隠した。一瞬しか見えなかったが、間違いない、あれは俺がここに来た目的である新作ギャルゲーの購入特典の袋だ。でも、なんで葵がその袋を持ってるんだ?あいつ普段ゲームしてないよな?ましてやPCゲームだぞ?葵がPC持ってるわけ...って、そういえば最近葵の部屋見てない...ま、まさか...
「なぁ、葵。お前女の子とイチャイチャするゲーム好きだったりする?」
「な、な、な、何をいきなり言い出すのかなぁー私がギャルゲーなんてやるわけないじゃん!!まったくおにぃの妄想はすごいなーあははー!!」
「俺、一言もギャルゲーなんて言ってないんだよなぁ」
「あーー!!そうだった勉強しないといけないんだったー!!それじゃあ私先帰るねー!!」
「あ!ちょまっ!!」
俺は逃げようとする葵を止めようとしたが、そんな事にはお構い無しに葵は行ってしまった。
「あからさま過ぎて逆に好きですって言ってるようなもんだろありゃ...って、いやいやいや、葵の事だ友達に頼まれて代わりに買いに来たに違いない!...うん、きっと多分maybe...」
あまりにも受け入れがたい現実に必死に言い訳を見繕いそう言い聞かせる。そうしていると、ふと俺は本来の目的を思いだし我に返る。
「...っと、今はそんなことよりギャルゲーだ!!売り切れたらたまったもんじゃない!!」
「おっ、はるぽんいらっしゃい!」
店内へ入るとヤンチャな声が俺を迎えてくれた。
「あ、ゆぅさん、こんちわっす」
「あー!また硬くなってるー!同い年なんだからもっと軽く接してっていつもいってるじゃん!なんならゆぅちゃんとか、ゆぅにゃんって呼んでくれていいんだよ!てか呼んで!!」
彼女の名前は
「あはは...善処しときます...。それより新作のギャルゲーまだ残ってますか!?」
そうすると得意げにニヤッとしながら「ボクにぬかりはないよ」と言いながら例の商品を取り出す。
「おお!さすがゆぅさんわかっていらっしゃる!」
「そういえば今日真人は来てないんだね?」
「あぁ、あいつはどうしてもバイト変われなかったんだってよ」
「そっかぁ〜、今日買えないならこの取り置きしてるのは売り場に戻しとかないとなぁ...取り置き自体ボクが勝手にしてるだけだし、なによりこれがラス1なんだよね〜」
「あ、その事なんだけど俺が-」
俺が代わりに買っていくと言おうとした瞬間そいつは現れた。
「あの!今日発売の俺好きの新作ってまだ残ってますか!!」
「いらっしゃい!今ラス1だよ!」
「よかった...その1つください!!」
「あいよ〜...んじゃ、ちょっくら対応してきちゃうから後でね!」
そんな...いや、そんなことありえない...。だって彼女は...
「それにしてもラス1だなんてラッキー...って君大丈夫?そんなこの世の終わりみたいな顔しちゃって...あ!もしかしてこれ買うつもりだったとか?だったら諦めるからいいよ!私はまた別のところ探して-」
「委員長...?」
思いもよらなかったであろうその言葉に彼女は数瞬理解に苦しんだ後に「ふぇ!?」と発しながら凍りついてしまった...が、すぐに我に返る。
「か、神崎く...って、な、な、な、なにをいきなり言いだすのかなぁー!!私は委員長じゃあ、ありませんよー!!私の名前は市ヶ谷り...じゃなくて、えーっと...そ、そう!私は
「いや今俺見て名前言ったよね!?」
「い、い、い、言ってないわよ!!きっと聞き間違いよ!!」
「なんだいなんだい?ボクの店で痴話喧嘩かい?なんか燃えて来たようだし...ボクも参加していい?!」
「ゆぅさんは面倒くさくなるだけなのでやめてください!!」
そういうとゆぅさんは不満げに「うぅ〜」と漏らしながら身を引いた。
「と、とにかく私は委員長じゃないので!!それじゃ!!...ってうわっ!!」
逃げ出そうとしていた所で焦っていたためか何も無い所で彼女は盛大にコケてしまった。
「うぅ...いったーい!」
「大丈夫か?委員長。」
そう言って俺はさり気なくごく自然に手を差し伸べる。
「う、うんありがと...はっ!」
「引っかかった!このごく自然に呼ぶことにより無意識に反応させ、そして引っかける。ありとあらゆるギャルゲーを攻略している俺にいつの間にか身についた話術の1つ!まさかリアルで使う日が来ようとはな!!」
「い、い、い、いやーいきなり何を言いだすのかなぁー私は手を差し伸べてくれた事に対してありがとって言っただけだからね!!まったく神崎くんの妄想はすごいなーあははー!!.....あっ。」
「おっ、今俺の事また呼んだな!しかもハッキリと!!」
「...ぅよ。」
「ん、なんて?」
「そうよ!私は
委員長は今まで積み上げてきたものが崩れてしまう恐怖と半ば諦めまじりのハッチャケた様子でそう言った。...ってか、神オプって自分で言うのかよ...。(事実なのは認めるけどさ...)
「その...、俺がそんなことするわけねーだろ。俺だってギャルゲーマーのはしくれだ、同じ趣味を持つ者同士、そんなことするわけねーよ。それより、あの委員長がギャルゲーマーだったなんてな!なんか急に親近感湧いてきたわ!」
決まった!と、心の中で思いながら俺は自然と笑みがこぼれた。
「あとこれ!俺も買いたかったけど委員長にくれてやる!」
すまんな真人、お前には今度初恋の練乳味男気たっぷり詰めましたアイスを奢ってやる!
「あはは...神崎くんはすごいね。私オタク趣味のこと誰にも言えないでずっと1人でだったんだけど、クラスでオタク趣味をオープンにしてる神崎くんたちが羨ましかった!だから...その、もしよければなんだけど...私と友達になってくれないかな?」
「いいぜ!よろしくな鈴!」
「り、鈴!?そ、そ、そ、そんな!た、確かに友達になろうとは言ったけど...い、いきなり下の名前でしかも呼び捨てなんて!!」
「別にいいだろ〜?もう友達なんだからさ!なんなら俺の事も悠って呼んでくれ!」
「そ、そういう問題じゃないでしょ!?」
「いいや!そういう問題だ!」
おれは満面の笑みでそう言い返すと、鈴は頬を赤らめながらグチグチ言った後にコホンと咳払いをすると
「そ、その...そういう問題なら仕方ないね...。は、悠.....わー!!!無理無理無理!!!恥ずかしくて死にそうだよ!!!そ、そ、そ、そのせめて君付けで!!!は、は、悠君!!」
「は!はい!!...ぷっ、あははははは!!」
「な、なによ!こっちは恥ずかしいんだから!!」
「あはは!いや!鈴を観てると、ははは!面白くって、あはははは!!」
鈴が「うぅ...」と呻いてる中、俺はため息をして息を整える。
「それはそうと、改めてよろしくな!」
「うん!こちらこそよろしくね!」
「あはははは!!やっぱりおかしくて笑っちゃうわ!あはははは!!」
「もう!笑うな!!」
「あのぉ〜」
会話に夢中になっていて忘れかけてた所で優花がいきなり出てきたものだから、俺たちは「わっ!!」と驚いてしまった。
「もうボクの店でイチャイチャするなんて羨ま...けしからん!!だから...ボ、ボクもその輪の中に入れてよね!!」
てっきり出ていけと言われるのだと覚悟していたがその予想外の言葉に俺は一瞬固まってしまった。
「お、おう!そうだな!鈴も女子のオタク友達いる方がいいもんな!!」
「え、ええ!!オタクに限らず友達が増えるのは歓迎よ!!よろしくね!そ、その...」
「ボクは優花よろしくな鈴!!」
「こちらこそよろしく優花ちゃん!!」
「それはそうと...もう9時だから早く帰って!!閉店時間1時間もオーバーしてるの!!」
「マジだ!ゆぅさんすんません!!」
「ごめんね!それじゃ優花ちゃんまたね!!」
「あいあいまたね〜!」
「いやぁ〜今日はいろんな事が起き過ぎて...疲れたというか楽しかったというか!うーん...でもこれだけは言える!今日は私にとって絶対に忘れられない大事な日になるって事!」
「そうだなぁ〜俺も今まで思ってた事が総崩れになったわけだし、ある意味忘れられないな!」
「もう!だからって広めないでよね!」
「へいへい、わかってるって!」
「うぅ...心配だなぁ...。あ、じゃあ私の家こっちだから!またね!」
「いや、夜も遅いし家まで送ってくよ。夜道を女子1人で歩かせるなんて男のする事じゃ無いしな!」
「いやいやいいって!ここからそんなに距離ないし、悠くんにも申し訳ないし...」
「そんなこと言われても俺のプライドがゆるさねーんだよ!何を言われようと絶対について行くからな!!」
「うぅ...もう!勝手にして!」
「おう!」
続く
俺とあいつの恋愛事情 さいく @sike
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