第六章(2)
二
「十数年前のある日、ここ鬼ヶ島での話じゃ。あまりに美しい、人間とおぼしき赤子が、砂浜にそっと置かれていた。ガムガラがとりあげて、わしのところに運んできた。親は分からぬ。誰も名乗り出なんだ。子鬼が預かってきた子との報告も受けてはおらなんだ。島で生まれた子か、どこかから運び込まれて置き去りにされた子か分からぬゆえ、この子をわれらに迎え入れるべきか、わしは、海ガメの甲羅の骨を焼いて神託を乞うた。ずっと昔、素性の知れぬ赤子を受け入れて育てようとしたら、その子から流行り
「妙見山、か」
「うむ。知っておろう、妙見山は、田原村を流れる川の源である」
「嘘を……でまかせを申すでない……」
俺は、肩で息をしながら言った。冷や汗がまた噴き出した。少し毛が生えてきた、自分のざらざらした
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