第一章(6)

   六


 俺は、受筒うけづつに幟を差して皆の前に立った。おばあの黍団子の袋を腰に提げた。両側に猿ノ助、犬吉、雉右衛門を従えた。見届け役の金太、銀次兄弟も脇に控えさせた。村人は一様に感嘆の声を上げた。


「おお、りりしや、桃太郎。ぬしゃあ、日本一の男じゃ」


「いよう、にっぽんいち!」


 拍手の中で俺は目を閉じた。


――思えば、生まれる前から川の流れに抗えない俺だった。


 クックックッ。


 笑いがこみあげてきた。


 そして、旅立ちの雉が鳴いた。


「怖えーかっ!」


 俺は一瞬鉢巻に触れ、そしてかっと目を見開いた。


「では、行ってまいります」

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