第7話 え、ここからいいところじゃ!

 あたしは制服に着替えると町に出た。今日働いた分のお金をもらう。お金について講座を開いてもらった。

「正規の戻り方は先輩が戻ってからだな」

 あたしはふと「あっちで騒ぎになっていないのか」という不安がよぎる。先輩は問題ないと言っていたけれど、不安と言えば不安。

 しかし、先輩が行方不明になったという話は聞いていない。つまり、時間がたつスピードが違うか、元のところに戻れるのかどちらかだと腹をくくろうと思った。

 それならば、露店を眺めたり、町のメーンストリートをまっすぐ歩いたりしてもいい。


 城壁がある!


 ああ、剣を下げている人がいる!


 ヨーロッパなんかではなく知らない土地なのだ。

 一瞬疑ったけれど知らない土地。

 そもそもヨーロッパだったとしてもどうやって移動したのかという不思議。


 石畳を歩く。

 夜ではないため、歩くのに問題はない。

 歩く。

 露店には野菜が並ぶ。見たことがないのもあるが、ヨーロッパ自体でも違うというのに、異世界で全く同じも不思議すぎる。

 旅行に来ているみたいだ。

 あ、猫がいる。

 そりゃいるよね?

 あ、猫が飛び降り……。

「お嬢ちゃん、危ない」


 あたしはひっくり返った。


 あれ、衝撃で戻るっていていなかったっけ?


 え、フロロールにお別れも言っていないのに!


 あたしはロッカーの前にいた。

 時計を見ると時間は一時間経ったくらいだろうか?

「お、キキが先か、早いな」

 会長が言う。

「ああああああああああああああああああ」

 あたしは思わず大声を出した。


「な、なんだよ」


「い、良いんです、八つ当たりだから! もう!」


 夢か幻か悩むよ!

 案の定、上履きは黒い。外にいた証拠だ。

 それに、ポケットの中にはお金が入っていた。

 これを見せれば会長も信じてくれるかもしれない。でも、それは……先輩のことも言わないとならない。

 先輩に会ってからだ――。


 その日、先輩は来なかった。急用で休むとあらかじめ連絡があったらしい。

 結局、先輩に異世界のことを聞くタイミングを逃してしまった。


 ――もう一度、行きたいと思ってロッカーを開けてみる――フロロールという目印を考えて――。

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異世界の入り口はロッカーで? 小道けいな @konokomichi

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