第二章
あかいみはじけた 1
読まれなかった手紙・2
あなたに出会って、わたしの世界は激変しました。
このコンクリートに空を塞がれた世界で、雑草として生を受け、希望など一度も抱くことは無く生きていました。ただ怠惰に街の片隅で蹲り、酸素を吐き出すだけの日々。
ヒトのエゴによってカテゴライズされ、価値を持たないものだと蔑まれることに慣れていく日々。
そんな中で、わたしはいつしか惰性で生きることに何の疑問も持たなくなりました。
わたしは保育者(ガーデン)と早く死に別れ、恥ずかしながら余り他のプランツと触れ合ってこなかったのです。だから、一人で茫洋と生きていくことにも抵抗が無かったのかもしれません。
だから、あなたと出会ったときも最初はどう接したらいいのか分かりませんでした。
だけど、辛抱強く、ゆっくりと、あなたは私に近づいてくれました。ともすればすぐに逃げ出しそうな怖がりのわたしを、見限ることなく。
そしてわたしは、人間の優しさを知りました。
会話する事の楽しさを知りました。
笑いあうことの、尊さを知りました。
あなたのおかげで。
それは、弱くなったと言い換えられるのかもしれません。
怖がりから、寂しがり屋になっただけなのかもしれません。
でも、それがなんだというのでしょう。
強く逞しく一人で生きることが本当に素晴らしい事ならば、素晴らしい事は須らく価値の無いものなのではないでしょうか?
だから、わたしは後悔なんてしていません。
あなたに感謝しています。
あなたを愛しています。
死を目の前にして今、殊更に思うのです。
わたしが消えても、あなたにはその後も幸せに、健やかにあって欲しいと。
願うのです。
わたしだったものを、捨ててでも、幸せになってほしいということを。
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