もえないひと 04
「お前ら、新入りだろ」
優しさなど持ち合わせていない、尖ったナイフのような声が突き付けられた。
リウは太陽を背に路地の先を塞ぐ、如何にもといった集団に目を眇める。十人ほどのグループはヒトとプランツが半々、皆リウと同年代の少年達だ。皆同じようなスラングで埋め尽くされたシャツを着て、安物のアクセサリーをじゃらじゃらと身に着けている。種族間差別を知らない世代となって久しく、ヒトとプランツがこうして対等に肩を並べるようになったことは喜ぶべきことなのだが、その結果が群れての悪事とは如何なものだろうか。
リウは舌打ちしてクーを自分の背後に押し込んだ。慣れない街でいきなり人の縄張りを侵してしまったらしい。
「そのナリはぁプランツだな。タンポポと……後ろのちっこいやつは何だ?」
「にー……」
無言のリウ。その足の後ろにはクーが怯えて隠れている。
「シロツメクサだ」
「シロツメー?お前タンポポなのにか」
「継代(コピィ)を請負った。俺が保育者(ガーデン)だ」
訝しげに小さな影を見つめる少年の目が、急に厭らしく細められる。
「そうか……シロツメクサじゃあ金にはなんねえなあ……だが、」
「きゃう!!」
突然背後からクーの細い手首が掴まれ、強引に宙吊りにされた。リウ達に逃げられまいと、先手を打って後ろから回りこんでいた数人の少年の仕業だった。
「!?」
慌ててリウがその手を振り払おうとするがもう遅い。路地裏に差し込む朝日の下、明らかにシロツメクサより大振りでシャープな花弁に飾られた、クーの雪のように白い頭部が露わになる。
「何だ?こいつシロツメクサじゃない?」
少年の声に、集団の目が一斉にクーに向けられる。怯えたクーが自由になろうと小さく暴れるが、子猫が爪を立てるような抵抗で少年の拘束が解けるはずもない。
「クーから手を離せ!!」
リウが叫んで拳を振り上げた。
ゴキッ!
その瞬間、リウの後頭部に鉄パイプが叩きつけられる。
衝撃で意識が一瞬飛び、ふらついてリウは膝をつく。その両腕をそれぞれを二人の少年に捻りあげられて、リウは地面に倒れこむことも許されず膝立ちの姿勢となった。
「うぐっ……」
リウは痛みに僅かに呻く。その声が耳に障ったのか、正面に立っていた男が片眉を上げてリウの鳩尾を蹴り上げた。「がはっ!」とリウは開いた口から粘ついた液体を吐き出す。
「お前は黙っとけって……?っていうか、こいつらそっくりじゃね?」
「あぁ?」
「なんだなんだ?」
少年たちが二人の頭部を見比べる。リウとクー、二人の花弁はその色だけを除いて驚くほど良く似ていた。
「白いタンポポ……?」
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