もえないひと 03

 プランツ、それが彼らの呼称だった。

 二足歩行可能な、高度な知能を持つ有機生命体。

 動物界におけるそれがヒトならば、植物界におけるそれがプランツだった。

 頭髪の代わりに色鮮やかな花弁を頭部に咲き誇らせ、自由に動かせる四肢を持ち、その表面は硬い細胞壁に包まれている。血管の代わりに維管束を体中に巡らせ、日光とを浴びることで血液に含まれた葉緑体を光合成させ成長する。五感もあり、感情を呈し、それを周囲に伝える表情を形作るための、顔のパーツもヒトと殆ど差異が無かった。

 ヒトとプランツ、どちらの種族も、生活圏を広げるために地を駆け、己の住み易い環境を生み出すために道具を利用し、生きるために食事をした。さらに意思の疎通を図るために音を発生させる器官を発達させ、歌を歌い言葉を用いた。言葉は同意を生み、集団が形成され、それは社会と呼ばれる発展形に昇華されていった。

 ヒトとプランツは驚く程良く似ていた。精神構造、特に情緒面においても似通った部分があり、言語体系さえも近似していた。

 今日、『人間』という用語はヒトとプランツを包括して差す言葉として使われている。

 ヒトもプランツも、全ては掻き混ぜられ、縦に並べられ、整然としたピラミッドは積み上げられた。ヒエラルキーという確固たる段階的組織構造の完成は、二つの種族に等しく格差を作り出した。

 富める人間は衛生的な美しい町で、美味しい食事に、浄化された水、綺麗な服を纏って暮らす。

 貧しい人間は鼠の走る汚れた街角で、僅かな食糧を齧り、泥水を啜り、擦り切れた服を着て過ごす。

 雑草プランツのリウとクーは、その社会構造の最底辺で、今こうして生きていた。 

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