第一章 

もえないひと 01

 読まれなかった手紙・1



 今日は何日でしょう?あなたがこの手紙を開いた日は。

 どうせなら、天気の良い日に、窓から暖かい光が差し込む中で読んでくれていることを願います。そんな風に、あなたが穏やかに日々を過ごしている事を願います。

 そこから見えるくすんだ景色は変わりませんか?

 差し込む光はほんの僅かな時間のままですか?

 あばら家と言っても差し障り無いその小屋ですが、わたしにとってそこは、大切な場所です。

 あなたにとってもそうだったのなら、これ以上無い幸いです。

 本題に入りましょう。

 あなたはまだわたしと一緒にいるでしょうか?

 わたしだったものと、一緒に居るでしょうか?

 そうならば、あなたに伝えなければならないことがあります。

 感謝と、懺悔。

 ずっと隠していた、わたしの秘密を。

 これは、教える必要は無いことなのかもしれません。

 けれど、ゆっくりと緩慢に、しかし確実に近づいてくる死の足音を前にわたしは筆を取らずにはいられませんでした。死んだ後で手紙など書けませんから。

 わたしは卑怯です。

 本当ならわたしが生きているうちに、話さなければならなかったのに。

 こうしてわたしは隠し事をしていた心苦しさから解放されますが、残されたあなたと、わたしだったものは堪ったものじゃないでしょう。

 ――――いけませんね。生来の臆病さから、不安になってきました。

 この手紙は、書き終わると共に燃やすか、隠すかしてしまうかもしれません。それはそれでいいかもしれないですね。所詮これは、わたしが、わたし自身の為に記した物でしかないのですから。

 すみません、話が逸れました。手紙を書くと、わたしの悪い癖ばかり出ます。

 いけませんね。あなたが傍にいてくれないと、ちゃんと手紙も書けません。


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