第5話 帰路にて

 ツチノコは博士たちからもらった報酬をまじまじと見つめながらスナネコと並んで歩いてた。ツチノコのポケットの中ではジャパリコインがカチャカチャと小さく金属的な音を響かせていた。


 コインのほかにはフリーパスの文字とイラストが描かれているカードも手にしていた。


「これがというのか…」

「その、というのは何ですか?」

 スナネコの質問に、

「これはだな、見た目はジャパリコインと違うが、似たような使われ方をしてらしくて、まあ、あれだな。いろいろなアトラクションってやつに乗ったりするためにー、」

とツチノコはカードを見つめながらしゃべりだした。が、ふとスナネコの方を向くとスナネコは道端に咲いている花に気を向けていた。

「おいっ、聞けよ!」

「きれいな花が咲いてます」


 スナネコの熱しやすく冷めやすい性格のことを思い出しながらツチノコは小さくため息をついた。


「ま、まあいいさ」

 それから、また二人は黙って歩き始めた。日は傾き、影は長く延び始めていた。


 砂漠の近くにあるバイパスの入り口あたりまで来た時だった。

「今日は、あれだな、なんつーか」

 ツチノコは、スナネコの方を向かず、気恥ずかしそうな様子で話始めた。

「あ、ありがとな。わざわざ調査に付き合ってもらって。それに…」

 ツチノコは小さく呟くように言った。それからスナネコの方を向いたが、スナネコはまったく別の方向を向いていて、話を聞いていなかったようだ。

「って、おい、聞けよ!」

 ツチノコは突っ込んだがスナネコは大して気にしていない感じだった。


「ツチノコ、みてください夕日がきれいです」

 スナネコの言うように、気がつけば周囲は見事なまでにオレンジ色に染まっていた。

「今日はいろいろあったので楽しかったです。ツチノコ、ありがとうです」

 スナネコは唐突に言った。

「お、おう。オレの方こそ…ありがと、な」

 ツチノコは顔を赤らめて恥ずかしそうに言った。あまりこういった会話には慣れていないようだった。


「それじゃ、ぼく、帰ります。また、そのをやるときは一緒にいってもいいですか?」

「あ?」

 またしても唐突な一言に、ツチノコは戸惑ったが、

「ま、まあ、好きにしろ。じゃあな」

と答えると向きをかえて歩き出した。


「またね~」

 分かれ際のスナネコの一言に、ツチノコは背を向けたまま片手を振って答えた。ただ、バイパスに進むツチノコの足どりは軽そうだった。

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はーどぼいるどてき 八重垣みのる @Yaegaki

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