第4話 図書館にて

 ツチノコとスナネコはセルリアンから逃れ、山の麓を目指して走っていた。すると突然、二人の上を影が横切った。


「何事ですか?」

 上から助手のワシミミズクの声が聞こえた。

「暇ができたから様子を見に来たのです」

 それから博士のアフリカオオコノハズクの声も聞こえてきた。

「せ、セルリアンから逃げてんだよっ!」

 ツチノコは叫ぶように言った。

 ただならぬ気を感じたのか、

「しょうがないのです」

と博士たちはため息混じりに言うとツチノコたちを担ぎあげた。



 四人は無事に図書館に戻った。それから、ツチノコはポケットから持ち帰った紙切れを取り出して博士たちに渡した。

「なんですか、これは?もしかして見つけたのは紙切れ一枚だけですか」

 助手はろくに見もしないで、あきれた様子で言った。

「しょーがないだろっ!って、ちゃんとそれをよく見ろ」

 続いて博士が助手の手から紙切れを取ると、

「これは…。助手、ちょっと待つのです。ツチノコの言うようによく見るのです」

まじまじと見ながら言った。

「どうしました博士?」

「ただの紙切れじゃないのです。何か写っているのです」


 よごれを払うと、紙切れの片面は光沢がかっており立ち姿の人物が何人か写っているのが分かった。


「博士、これはもしかするとヒトですか?」

 助手は覗きこんでみると言った。

「助手、これは写真というものだと思うのです」

「写真…」

 博士たちは写真というものがあるということは本を読んで知っていた。しかしながら実物を見るのは初めてだった。

「そにしても、写っているのはヒト本来の姿なのでしょうか?」

「おそらく。これはなかなかのものなのです。図書館ある本にはヒト本来の姿が描かれたもはごくわずかなのです」

「これは貴重な資料になりますね、博士」

「そうなのです。とはいえ、思ったより収穫が少ないのです」

「どうします?」

「おい!貴重な資料なら成果として充分だろっ!」

 黙って聞いていたツチノコは声をあげた。

「しょうがありませんね」

「約束は約束なのです。島の長たるもの示しはちゃんとつけるのです。我々は賢いので」

 それから、博士たちは本棚から小さくて透明な箱を取出して持ってきた。

「これはジャパリコインと似ていますが少し違うものなのです」

「どうやら特別なもののようですよ」

 博士と助手は続けた。


 中に収められていたのは、ジャパリコインより二回りほどの大きさで文字や図があしらわれたデザインが描かれていたコインだった。


「これは記念メダルと呼ばれるものらしいのです。このパークが出来たときにその記念として作られたもののようなのです。ヒトは特別な出来事があったときはそれを象徴するものをつくっていたと考えられるのです」

 博士は説明をしながら手渡したが、ツチノコは声も出さず驚きに満ちた表情でそれを受け取った。

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