第16話

「スライムか……魔物ってどんなもんなんだろな」


 馬車に揺られながら、良介が呟いた。

 魔物。

 地球では考えれないような能力を持つ生物。文献などで見てはいるが、いざ実物を見るとなるとびびってしまいそうだ。


「でも、スライムでしょ? ゲームとかでも最弱でこの世界でも難易度はFランク。俺らは上位職に超級スキル持ち。負けるわけがないよ!」


 優の言う通りだ。この数日で俺らはかなり強くなった。




個体名:佐藤康太

種 族:人間族

 職 :大剣士


体 力:400

魔 力:200

筋 力:350

耐久力:300

敏 捷:300


総合戦闘評価:B+


超級スキル:『転生』

初級スキル:『見切りⅠ』『硬化Ⅰ』

固有スキル:『筋力強化』『剣戟補正』



 S、A、B、C、D、E、Fの順で強いクエスト受注者――――――通称冒険者の中でも総合戦闘評価の通りBクラスの力がある。最近は伸びなくなってきたが、かなり強いはずだ。

 ちなみに上位職というのは、進化した職のことである。職によって能力の上がり方やスキルが変わるのだが、職が進化し伸び代が上がるときがある。俺の『大剣士』は剣士の進化職だ。


「それもそうだけど、俺まだ超級スキルを使いこなせて無いんだよな」


 俺は超級スキルを使いこなせてない。というより、迂闊に使えない。転生っていうと、多分1回死ぬんだろうし、気軽に使えるわけがない。


「大丈夫だよ康太。俺もまだよく使えねえんだ」


 拳をぎゅっと握りしめ呟く良介。転移前の細かった体の面影はもう無い。ただの筋肉ダルマだ。


「2人とも扱いが難しいものだったんだ……。俺は簡単だったよ!」


「ははっ、優の超級スキルは光るだけだろ?」


「なわけないだろ!」


 光るだけの超級スキル…………可哀想すぎる。まあ、違うみたいだけど……。

 ちなみに優のポケットにはワイバーンの鱗が1枚入っている。優は4つの魔法陣を作れるので、触媒を使えば2つ増え、第六位階魔法が行使可能となっている。

 ワイバーンの鱗に魔力を流すと、いくつかのバリエーションの魔法陣が出る。それと自分自身の作った魔法陣を合わせて、より高い位階の魔法を行使するのが触媒らしい。

 魔法陣を最初から作成するわけではなく、予め作られた魔法陣を使用するので、ノータイムで魔法が発動できるため、限界を突破した高位の魔法が行使できるのだ。


 そして、優はワイバーンの鱗の魔法陣のバリエーションを全て覚えている。

 素直に凄いと思う。


 ワイバーン……竜族の端くれと言えど、強力な種の血を引いた生物。その素材の触媒なんて魔法陣のバリエーションが多すぎる。

 俺が覚えているのは……『第二位階 魔法ファイヤーボール』、『第三位階魔法 《ファイヤ》』、『第四位階魔法 《ウイングシールド》』、『第五位階魔法 《パワーアップ》』、『第六位階魔法 《黒炎》』くらいだ。


「そろそろ着きますよ」


 従者から声がかかった。

 そろそろ着くのか。思ったより時間はかからなかったな。

 さて、スライムを見るとするか。






「スライム討伐後、飯にするか……」


 馬車から荷物を出す。

 現在は昼前だ。何か食べてから戦闘も嫌だが、戦闘してから何か食べるのも嫌だな……。

 馬車の従者は5時間ほど待ってくれるそうだが、5時間を超えると街に戻ってしまうので、早めに終わらせたい。

 ちなみに貸切馬車の値段は金貨3枚とかなり安い。いや、1日で30万円だから高いよな?

 待ち時間は薬草を積んだりするらしい。


「だね。動きが鈍くなって殺されたらたまったもんじゃないよ」


 確かにそうだな。


「わざわざ皮鎧にした意味がなくなっちまうな」


 俺らの装備は皮鎧と各自武器だ。加工され、かちかちに固まっている皮の耐久力はかなり高い。おまけに軽く、安いのだ。金属鎧よりも動きやすく、使い勝手がいい。


 それに、それぞれの武器もかなりの高級品だ。俺の武器は魔銀製の大剣、良介はファイヤヘラクレスの外骨格を使ったガントレット、優は白王樹の杖だ。


「よし、討伐後に飯で! それじゃあ、出発!」

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人型の何かに転生したようです かるご @Karugo

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