第15話

 で、結局買いました。女神様の大剣。


「まいどあり!!」


 俺たちや勇者に高額な武器が売れたからなのか、機嫌が良い店主に見送られながら、『ナンナの鍛冶屋』を後にする。


「では、これよりヴォルさんから受けたクエストを受けたいと思います!」


 優が胸を張り、クエストの紙を

広げる。


「良介は食料! 朝一で出発するから、2食を3人分! 保存が効きそうなやつで」


「おっけー。やっぱし、干し肉とかかな」


 まあ、そこはテンプレだよね。


「康太はポーションと魔法の触媒をお願い! できる限り安いので」


 ポーションというのは回復魔法の成分を液体にしたものだ。直接塗り込み使うのはもちろん、飲んでも傷が治る優れものだ。

 上位のポーションの中には、死んで1時間以内なら蘇生可能とかいうファンタジーすぎる効果もある。


「わかった。優は?」


「俺は馬車とクエスト受注するよ。買い終わったら、再びここに集合! 4時までに戻るように」






「えーと、ここか? ポーション屋って」


 華やかな城下町とは対照的に、暗く薄汚い店だ。

 看板も黄色く変色している。


「あ、怪しい感じだな……」


 と言いつつも、木製の扉を開ける。

 ちなみに、今回の予算は金貨1枚だ。相場がわからないが、10万円もあればしっかり買えるはず。

 例え王国の保護が無くても生活していけるように、予算は低めにした。


「いらっしゃい」


 扉を開けた先にいたのは、赤黒いローブを着た老婆だ。

 奥で木製の椅子に座っている。

 店内は薄暗く、様々な色の液体が入った瓶が紙の札を付けて置いてある。


 えーと、あった。黄緑色の液体に、下位回復ポーション『銀貨2枚』と書かれている。中位のものは銀貨5枚。上位のものは金貨1枚となっている。

 回復ポーションの棚で綺麗に飾られていて、最も高いエリクサー?という紫色の液体は白金貨9枚もする。900万って……誰が買うんだ?


 あとは魔法の触媒だ。

 下位ポーションは3つ購入するので残りは銀貨4枚だ。触媒を使って高位魔法を扱えるのは優だけなので、1つでいいだろう。


 触媒は杖などの発動体と違って使い捨てだから安いだろうけど……。




 触媒の種類が多くて面白い。値段は銀貨4枚以内で収められそうだ。

 それにしても、触媒には色んな種類のものがある。

 特殊な鉱石を加工したアクセサリーの触媒は高いなぁ。まあ、その方が携帯していても違和感がないし、数回使えるみたいだし、当たり前か。

 モブリウムの首飾り、グリゴロイトのピアス、アルセウムの腕輪…………全くな馴染みのない鉱石のものばかりだ。値段は金貨15枚辺りとなっている。高い。


 一方で、魔物の素材の触媒は安い。まあ、見た目も悪いし、かさばるからな。

 ゴブリンの耳、スライムゼリー、オークの牙、オーガの角(雄)…………河童の皿なんてものもある。河童いんのかよ……。

 河童の皿は金貨7枚だった。高けえよ。


 お、ワイバーンの鱗が銀貨4枚か。位階を2つ上げる触媒だし、これがいいかな?


「ええと、これら下さい」


 ポーション3つとワイバーンの鱗を入口に置いてあった木の籠に入れて、購入する。


「金貨1枚だよ」


 腰に付けた革の鞄から金貨を取り出す。銀貨10枚で金貨1枚分だ。


「まいどあり。あんた大剣士かい?」


「え、何でわかったんですか?」


「そういうスキルがあるんだよ。家の主人も大剣士でねえ。主人に頼まれて大剣士職のもんにはこれをおまけしてるんだよ。ほれ」


 そう言って老婆は黄色いポーションを取り出した。


 おまけ……何か凄いものかな!?


「大剣士って職は不遇でのう。攻めは戦士に負け、守りは騎士に負ける。それなのに数は多い。よく死ぬんだよ。このポーションは寿命を20秒間伸ばすものだ。死ぬ間際にこれを使って相手に一太刀入れてやれ。何もせずに死ぬのは勿体無いわい」


 し、死ぬの前提なのか……。これを使うときは死ぬ間際って。

 でも、貰わないわけにはいかないので貰っておく。


「ありがと婆さん」


「どういたしまして。平凡なだけじゃ、あんた死ぬからな」


「は、はい」


 凄い複雑な気分だな……。

 あ、触媒見てたから時間がやばい! ちょっと急がなきゃ。

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