夢の棺で眠れ
●姉
わたしには小さないもうとがいて、芋が大好き。スーパーでよく売ってる、さつまいもの無人販売機みたいなのを買わないと、暴れまわる。
世界には、もっと美味しいものがたくさんある事を、知ってるのはわたし。
でも、妹の一番はいつも石焼き芋と不二家のモンブランケーキ。だから妹の手を引き連れて近所という世界を歩き回っている間、妹はなんて幸せなんだろう。と思っていた。
でも、歩いている内にいい事を思いついてしまったのだった。そうだ、妹に世界を教えてあげよう。だって、大きくなったらこれから世界にあなたは出て行かなくてはならないから。
姉である事は、いもうとより先に世界を知る事。妹よりも先に立つためにわたしは生まれてきたってこと。これは宿命だった。それを思い出したわたしは、さつまいもが好きな妹に教えてあげなくちゃいけない。
わたしは、年の離れた妹のためにたくさんの写真を見せることにした。私が実際に行ったことのない世界について、教えてあげること。それがいつの間にか日課になっていた。それが全て偽物の空想の世界であっても構わなかった。現実は、さつまいもに収まり切らない理屈と感覚でできていること。その意味を、教えてあげなくてはならない。
●妹
おねぇちゃんは、私が小さい頃に死んでしまったそうです。理由はわかりません。遺書とかもなかったそうです。なんで死んでしまったのか誰もわからなくて困ったと。大きくなってからお父さんに教えてもらいました。
私が覚えているのは、寝る前によく、二段ベットの上から、色々なお話を聞いたくらいの思い出です。本当に色々な事を教えてくれました。おねぇちゃんは、たくさんの本を読んでいたみたいで、たくさんの事を知っていました。わたしの為に沢山の難しい本を読んでくれたり、たくさんの知らない国の言葉でたくさんの景色を教えてくれたりしました。それは、小さい頃のわたしにとって宝物のような時間だったと思います。例えば、「マンホル国では、寝る前にキスをすることが習慣だったそうです。」とか。だから、私たちはお互いに、寝る前のキスをしていました。母にしようとしたら怒られました。でも、わたしはそれが普通だとおもいこんでいたのでショックだったし、それから母の事が苦手になりました。
わたしは、何故かさつまいもの事が大好きで、母が年末に父の命令で作らされる芋の天ぷらが乗った年越しそばを食べるのが好きでした。おねぇちゃんは、何故が食べ物が嫌いでした。いつもこっそり、虫の形をしたゼリーを買って食べていました。
そんなおねぇちゃんは、私が10歳の頃に首を吊って死んでしまいました。おねぇちゃんが死んだ日の事はよく覚えていません。それから引っ越しを何度か繰り返したせいで、家の記憶が曖昧になっている事もあるけど、それから母が私に対して奇妙な目で見てくるようになったことも関係しているかもしれません。
きょは、私が姉の年齢を超えてしまう日。来年にはもう結婚する予定です。お腹の中には赤ちゃんがいます。
●娘
とりあえずピアノでも習わせようと思って。小さい時に、何か1つくらい芸事はやらせあげようと思ってました。
本人が嫌でも、ひとつくらい何かしてあげたほうが、後から焦って始めたり、後悔してしまうより良いかなと思ったんです。それって大事なことだと思うから。私はそうじゃなかったから。
パートで働いたなけなしのお金は全て娘のしたいことに捧げました。それがいいことか悪いことかなんて、今でも分かりませんけど。
そんか娘はもう大きくなってしまって、今は元気に高校いってますけど、習い事をしていたことも覚えてないみたい。今日は友達とディズニーで遊んでくるってラインもらっただけ。
なんだか、インスタのフォロワーもいっぱいいるみたいで、SNSつながりで知り合った知り合いからマンドリンを習ってるみたい。
私は、娘が動画であげてる下手くそなマンドリンの音を聞くのが好きで、家では殆ど会話なんてしないんですけど、でも知っていると思います。誰よりも近い場所で、遠い場所いる彼女の事。
✴︎星
星をつなげると姉妹みたいにみられてしまうんですけど、本当な生まれも育ちも違くて。みんな適当なんだなーって。似ていることとか似ていないことなんて、どうでもいいんですけどね。なんか、お揃いのブレスレットくらいつけててもいいと思うんですけどね。
今日はタバコ記念日。二人で禁煙を始めた日です。星の輝きが落ちてきたってのは火種が灰皿に吸われたって意味で捉えてくれると嬉しいな。私たちいつまでも、そこに、いますんで、良かったら見つけてみてくださいね。約束ですよ。
皆殺しの比喩 百均 @kurobako777
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