つま先立ちの少年
ソラ
つま先立ちの少年
街にすむ どこにでもいるような こども
そのこどもは つま先立ちで暮らしている
「ねえ、どうして きみは いつもつま先で 立ったままなんだい」
ともだちが いいました
「だって じめんは汚れているじゃないか」
少年は いいました
ある 風の強い日
「ぼうや きょうは北風が強いから そとにでては いけないわ」
おかあさんがいいました
けれど 外で元気にあそぶ ともだちにひかれて 少年は 飛び出していきました
「わあ!」
ともだちのわに はいろうとした 少年は 強い風にふかれて ぐちゃぐちゃのどろんこに おっこちてしまいました
「どうしてみんな こんなに強い風でも ころばないんだろう」
少年が考えていると 北風がやってきました
「それはね みんな 地面に足をちゃあんとつけているのさ」
北風は まわりをぐるぐると回っていて 少年は 立っても立っても ころびました
「どうして地面にあしをつけるのさ」
少年はかなしくてかなしくて なみだをふくたびに かおがどろまみれになっていきました
「みんな 地面にぴったりと足をつけているのはね それは 思い切り ふんばって 地面をけりだすからなのさ」
北風はくろくろとした顔の少年に 語りかけました
「どれだけ強い風が吹いても 地面にちゃあんと足がついてさえいれば 体を支えられるんだ 足をつけるというのは そういうことなのさ」
泥まみれになった少年は
やがて 大きく地面をけりだし ともだちのところへと 走りだしました
つま先立ちの少年 ソラ @sorakudo
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