深夜2時にメリーさんから電話があったので突撃してみた

トカゲ

深夜2時の電話


 メリーさんって知ってる?


 少女が引越しの際に古くなった外国製の人形を捨てていく。

 その夜、電話がかかってくるんだ。

 「あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの…」

 電話を切ってもすぐにかかってくる。

 「あたしメリーさん。今タバコ屋さんの角にいるの…」

 「あたしメリーさん。今あなたの家の前にいるの…」

 「あたしメリーさん。今あなたの部屋の前にいるの…」

 そして最後には――


・・・


 「私メリーさんなんだけど! 今ゴミ捨て場にいるんですけどぉ!」

 深夜2時という夜中も夜中に携帯が鳴ったので出てみると、幼い感じの声で何か言われた。


 それを聞いて思い出したのは昨日のテレビでやっていたメリーさんの電話っていう都市伝説だ。何か捨てられた人形が戻って来るとかそんな話だったと思う。

 もう少し早い時間だったら怖がったり戸惑ったりしたかもしれないが、今は眠いのでイライラしかしない。

 「そうですか。おつかれさまです」

 だから取り合えず労って電話を切った。


 おやすみなさい。スヤァ――


・・・


 「私はメリーさんって言ってるじゃん! 今コンビニにいるよ!」

 だからどうした。時計を見てみると深夜2時30分、公衆電話があるコンビニといえば近所のあそこしかないな。

 「わかった、そこで待ってろ。今から行くから」

 「はい!? いや、何か想像と違うんですけど! 来なくて良いんですけど!」

 「うるさい。今から行くから動くなよぶっ殺す」 

 電話を切って身支度をする。

 明日も仕事だっていうのに迷惑な輩もいたものだ。説教してやる。

 俺は寝ぐせだけ簡単に直して外に出た。


 コンビニまでは急げば5分も掛からない。待ってろクソ野郎!

 というか、メリーさんの口調が一昔前のギャルっぽくてなんか腹立つんだよ!  いい加減にしろ!


 コンビニに着くと俺は直ぐにメリーさんを探し始めた。

 声からして女性なのは間違いない。まずはコンビニの中を探そう。

 残念ながらそれらしい女性はいなかった。店員に聞いてみると少し前に外の公衆電話を使っている小学生くらいの女の子はいたという証言を得る。

 どうやら場所はここで間違いないらしいなぁ!


 外に出てコンビニの周りを探す。

 今の俺はハンターだ。獲物を狩るハンターなんだ。

 待ってろこの野郎。空手3段舐めんなゴラァ!

 「そこかぁ!」

 「ひぃ!?」

 コンビニの裏手で震えながらしゃがみこんでいる少女を見つけた。

 多分コイツが迷惑電話の犯人だろう。

 「こんにちわぁ、メリーさぁん!?」

 「きゃああっ!?」

 メリーさんは130cmくらいの小柄で華奢な少女だった。

 腰まで伸びた茶髪が何処か背伸びをしているような感じがして可愛らしい。

 「おい、なんでこんな真夜中に迷惑電話なんかしてきたんだ」

 「迷惑電話じゃないし! 私、メリーさんだし!」

 「うるせえ! メリーさんだろうが深夜2時の電話は迷惑なんだよ! 時間を考えろ!」


・・・


 この少女の話が本当だとすると、彼女は俺が小学生の時にハマったアニメの人形なんだそうだ。確かにうろ覚えだが引っ越しの時に人形を捨てた覚えがある。

 俺に捨てられた彼女は長い年月をかけて力を付けてメリーさんとして戻ってきたらしい。

 「私、アンタに会うために一生懸命頑張ったのに、何なのよ! いきなり怒ったりして!」

 メリーさんはそう言って涙を流しながら俺の体をポカポカと叩いてくる。

 それを見て可哀そうになってきた俺はメリーさんの頭を撫でた。

 正直に言うと俺はロリコンだ。そんな俺にとってメリーさんの容姿はドストライクだった。

 「そうか、すまなかったな。その、なんだ。お前さえ良かったら、これからは一緒に暮らさないか?」

 「えっ!? 良いの? 私、メリーさんだよ?」

 「かまわないさ。お前さえ良かったらだけど」

 「嬉しい!」

 その時俺は自分がロリコンでよかったと本気で思った。


 後からメリーさんは霊感が無い人にはただの人形にしか見えない事が分かるんだが、そんなのは些細な事だろう。

 何だかんだあったけど俺、幸せになります。


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深夜2時にメリーさんから電話があったので突撃してみた トカゲ @iguana

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