第8話 調査結果発表
国立理学総合研究所に所属する実績ある研究者達も検証した発表であり、『地球外から持ち込まれた物と判断せざるを得ない』という調査結果は「異世界のリアル」の現実性を高めた。
異世界の存在に懐疑的否定的な方がまだまだ多かったが、この発表で「もしかすると? 」と考える方が増え、「異世界のリアル」を撮影してきた『HIBIKI』とは何者で、どのように異世界と行き来しているのかにこれまで以上の関心が集まる。
高橋純の発表内容で関心を集めたのは、鉱物と植物の性質。
鉱物は常温での硬度が鉄程度なのに、ある一定以上の高温では、温度の上昇に沿ってその硬度が飛躍的にあがり変質しにくくなる。この性質は高温下で使用される製造物で求められているもので、宇宙船などの大気圏再突入時などで生じがちな問題を解決する可能性を持っていた。
また植物の方は、DNAの塩基配列が地球上では見られないものであり、その成長力は地球上で発見されている植物とは比較にならない速度だった。異世界から地球へ持ち込まれた段階ではまだ芽が出た程度だったが、持ち込まれてから十日程度で数十センチ育って開花している。
また、高温多湿な地域だろうと砂漠のような劣悪な環境でも育つ性質と見られている。もしこの成長力と繁殖力の秘密を解き明かし、食材として利用可能な植物として改良できたなら、食糧問題は解決し、飢えで苦しむ状況を大きく減らせるだろう。
「私達の発表内容を検証したいという研究者と研究機関は高橋までご連絡下さい。各国が認定している機関かそこに所属している研究者と限定させていただきますが、サンプルの提供も一定の手続きの後には可能です」
この発表は、今やキラーコンテンツになりつつある「異世界のリアル」の放送権を持つ新時代TVが取り仕切って、日本のキー局TV全てで放送された。そして海外からの大勢の報道陣によって世界中で発表内容は報道された。
研究者達はもちろん様々な企業、そして国家がこの発表結果に注目し、国立理学総合研究所への問い合わせは、発表終了後から連日続く。また「HIBIKI」の正体を明かせという圧力も、新時代TV、国立理学総合研究所、そして大手広告代理店”リテラ”に対して強くなっていった。
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