第8話 数町風待の手紙

 こんにちは、ぼくは数町かずまち風待かづまです。

 数町風待さんに書いています。


 ここにいる炎堂に言われて風待くん宛に、二回目の手紙を書いています。あんまり書くのは好きではないです。風待くんはどうですか?


 ぼくは初め、絶望していました。炎堂明日菜が投獄されたとき、ぼくは、「もう終わりだ、もうだめだ」と思いました。


 でも、もう一人の炎堂が現れて、みんながやる気を出しました。僕たちは、ずっと、沢山の異世界を旅して、伝説の退を探していましたが、ちっとも見つかりませんでした。炎堂は、投獄されていたのに、伝説の世界の方から呼ばれるなんて、流石だな、と思いました。


 炎堂は自分では言わないけれど、とっても辛い経験を沢山してきました。


 それなのに、何でも自分で背負い込んで、すぐ、一人で戦って、一人で解決しようとします。初めは、身勝手な奴だと思っていました。


 でも、実はそれも、人一倍、人の事を考えているからなんです。誰かが傷付くなら、自分が傷を受けようとします。もっと、自分のために色々すればいいのに、と思います。


 そっちに行った、炎堂の面倒を見てくれてありがとう。きっと大変だったと思います。めんどくさい奴なので。すごく、ありがとう。


 もう一人の炎堂は、来たばっかりの頃は、普通のうるさい女の子で、役立たずどころか邪魔でした。


 でも、朔夜と炎堂を助けたいって気持ちは本物で、だんだん、みんなの気持ちを変えていきました。


 なんと言っても、全くの役立たずだったのに、頑張って、ファイアースターターの異能力を発動したのには驚きました。


 異能力者は、みんな、子供の頃に自然と力を身につけて、十歳を越えると、もう異能力は身に付かないと言われています。


 でも、もう一人の炎堂はすごく頑張って、なしとげました。すごいです。


 残念ですが、ボスのマーク・フラーミルは取り逃がしてしまいました。


 でも、炎堂の奪還には成功しました。


 奪還と言っても、誰もいない監獄を目標に攻め入ったのですから、敵もびっくりしたと思います。忘れ物でもしたのかな? と、思ったと思います。


 まだ、炎堂には会えていませんが、もう一人の炎堂がこの手紙を持っていく頃には、あの監獄に帰ってくるはずです。楽しみです。


 今回の勝利には、僕も大活躍しました。


 炎堂との合わせ技で『紅蓮竜ぐれんりゅう』という技を編み出したんです(偶然だけど)炎堂の紅蓮の炎に、ぼくのつむじ風をぶつけると、火炎の竜巻になったのです。フラーミルが撤退する決め手になりました。


 あと、フラーミルが作った、人間の能力を足していく機械にも欠点があったのです。


 フラーミルは凄い異能力を沢山もっていました、でも、実は、弱点も足し合わさっていたのです。


 だけど、一番のポイントはでした。


 極悪非道のフラーミルだったのに、ほんのちょっとだけ足し合わさった良心が、ほんのちょっとだけ隙を生んだんです。きわどい戦いでしたが、勝てて良かったです。


 ついでに、朔夜も奪還しました。ぼくは、どうでもよかったんですが、もう一人の炎堂は泣きながら、沢山、朔夜と話していました。


 結局、朔夜は、この世界にとどまることを決めました。もう一人の炎堂は残念そうでしたが、またいつか会えるよねと言って、笑顔で別れました。


 もう一人の炎堂は、また、異世界への旅を続けるみたいです。


 炎堂の様に困っている人がいるかもしれないし、いろんな世界に飛び火したフラーミルも気になると言っていました。


 これから、そっちの風待くんも炎堂に迷惑をかけられると思うけど、僕も同じなので、頑張って下さい。


 これでお別れです。でも、またお手紙書けるかも知れません。


 さて、問題です。それは、なぜでしょう?


 正解は、こっちには、そっちに戻れる朔夜がいるからです。


 朔夜が帰るときに、また、ぼくもそっちに行ってみたいです。


 じゃあ、また。一生会えない風待くんへ


――数町風待



おしまい





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とおりゃんせ異世界 ~side B~ 柳佐 凪 @YanagisaNagi

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