私の彼
臆病者の私は一歩遅れて教室に入る
私の到着を待っていた教室中が私を見つめ
苦笑いで私を見つめる
私はすぐに彼を見つけた
彼もすぐに私を見た
一瞬で互いに認める
あの人は私だと
あまりにも似ていて
ビビビと奇妙な感覚になった
これが恋か
それにしては彼は私に瓜二つ
臆病者の私は奇妙な感情を解明できない
しかし彼は私に似すぎていて
つい見てしまう
怖いもの見たさのような気持ち
ドッペルゲンガーは怖い
でも見ないではいられない
私が彼を見ると
いつでも彼は私を見ている
彼と目が合う
目が合うと恐ろしく
おぞましく
すぐに目線を外す
でも私は彼を見ないではいられない
怖い
怖くて彼を目視で確認してしまう
必ず彼も私を目視で確認している
そうするとそれが恐ろしくなって
臆病者で卑怯者の私はすぐに逃げる
彼はどんな気持ちなのだろう
これだけそっくりなのだ
おそらく彼も同じ気持ちかもしれない
彼もとても臆病者でとても卑怯者だろう
怖くて怖くて
ついつい私を見てしまい
恐ろしくて恐ろしくて
ついつい逃げてしまう
そして何度も繰り返す
決して言葉を交わすことはない
けれども彼の話し声に聞き耳を立てていると
これもまた私にそっくりなのだ
声も
声の調子も
言葉も
思考も
これほどの相手はもうお互いに出会えない
彼と私は
もっと近づくべきだったのだろうか
もう会えないのだろうか
大人になりすぎた今となっては
もうよくわからない
わからないが
とにかく彼にもう一度会いたい
彼を一目確認したい
私にはきっと彼が必要だ
けれども彼との距離は
近いほうが良いのか
遠くが良いのか
わからない
きっと一度でも近づいてみなければ
わからない
しかしもう彼と遭遇することは無いかもしれない
もう適当な距離を確かめることもできない
臆病者はこうやって
いつでも何も得ず
いつでも何も失い
くだらない生活だ
彼にあいたい
ちょっとずつ短文 うすむらさき道 @usmrsk3chi
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