ヒアリ

すーたん

僕はヒアリだ。



「僕はヒアリだ」


僕はヒアリです。そんな当たり前な一言にイチャモンつけるやつがいます。

目の前のこの男は、白衣を身に纏い、シワの多い目頭を抑えながら、こちらに言い放つ。


「お前は人間だろうが」


全く、僕はどう見てもヒアリなのに……この男は、イチャモン付けてきます。


「ヒアリだよ。君は自分がヒアリなのに、自分のことを人間だと言えって言うの?酷いね。」


目の前の人間は、驚愕の表情でこちらを見つめてくる。まるで、信じられないものを見ているような、そんな感じを思わせた。


しかし、全くもって意味がわからない。ヒアリはヒアリであり、それ以上でもそれ以下でもないのです。それなのに、この人は貴方は人間だと言ってきます。


「ヒアリだと思ってる人間がいるかもしれないよ?その場合はどうなるの?」


「それは理屈だよ。それも屁のついた。」


呆れてものも言えません。この人は、僕のことをヒアリではなく人間であると屁理屈を言ってきます。ヒアリだと思っている人間はヒアリなのか。人間なのか。どちらなんでしょう


しかし、こちらにも譲れない信念があります。それはヒアリとしての誇りのようなものです。


「君の言ってるそれは、極端な話ヒアリに生まれたのにヒアリでない。って言われてるようなものだよ。ヒアリであると思ってるんだから、僕はヒアリだよ。」



そう、僕はヒアリだ。それは譲らないし、譲れない。それを決めるのは僕であって、他人じゃない。


「それを決める人間がいます。あなたは人間であると、それが私たちの決めたことです。」


それは信念とは真逆の意見でした。


「それを受け入れたくない人間がいる。受け入れない人がいる。僕はヒアリだ。それは譲らない。」


しかし、僕は負けじと言い放つ。

すると、目の前の人間は落胆したように見えた。


「ここまで酷かったか……。ありがとう。また一ヶ月後来てね。」


漸く、今日のカウンセリング?というやつが終わったようだ。僕は住処に帰ることにする。それにしても、あの人間には僕が何に見えているんだろう。


「僕はヒアリだよなぁ……」


眠たい。今日は寝よう。

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ヒアリ すーたん @kanzaki0605

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