栗ご飯
@kuronekoya
ごらんあれが「」北のはずれと……
「ここは誰? 私はどこ?」
「おや、目を覚ましたようだね。
ここはブルーモリスの村。杜のキャッスルよりも、ストーンハンドの
「そんな遠くまで……」
「君もあの爆弾で東の都から逃げ延びてきたクチだろう? よかったら途中の街がどうなっていたか聞かせてくれないか? この村まではなかなか情報も伝わってこないけれど、だんだんそれの影響らしいものも出てきてるんだ」
「影響って……。! あなたのその体!?」
「ああ、なんだか肩のあたりがムズムズすると思っていたら、腕がもうひと組生えてきた。でも、今では普通に動かすこともできてけっこう便利なんだぜ。俺の他にも、3つめの眼ができたやつ、脚が6本になったやつ、おっぱいがたくさんになったやつ……色々だな」
「私は……」
「いいよ、いいよ、無理して言わなくても。多かれ少なかれみんな何かしら影響は受けてるわけだし、それ以上に死んでしまった者も多い……直接爆発の影響なんて受けてないこんな辺境でもな」
「私はエイトプリンスから来ました。東の都は壊滅です。西の方は私もわかりません。道中、杜のキャッスルあたりまで人は死に絶えていました。ストーンハンドも、食べられる植物や動物がほとんどなくて人々は飢えていました」
「くっ……、やはりそうか……。だが、安心しろ。この辺はとりあえずまだ食えるものがある。身の振り方をきめるまで、よかったらこの村でゆっくりしていってくれ」
「でも、そんなの悪いです。私、お金も何も持っていなくて、お世話になってもお礼のしようがないのです」
「はっはっは。もうカネなんて意味はないよ。今のこの村はいわば『原始共産制』。みんなで働いて、分け合って食べる。そんな生活だ。君も働いてくれればそれでいい。
とはいえ、今はもう夕方だ。働くのは明日からにして晩メシにしよう。ちなみに今日は栗ご飯だ」
「栗ご飯……。もうそんなものは食べられないと思っていたわ」
「だろう? 今持ってくるから待っていな」
「……。これが、『栗ご飯』?」
「ああ、『栗ご飯』だ。あいにく栗は虫食いだらけで穴だらけだけどな」
「ええ、これが『栗』だというのは判るわ。虫食いだらけであることも」
「大丈夫だ、ちゃんと栗の味はする」
「確かに、栗ご飯の香りはするわ。ほのかに……甘い香り。でも、このご飯は何? 真っ白で、なんだかウネウネと動いているわ」
「それは、栗に巣食っていた虫だ。爆発の影響なのか、熱や圧力じゃ死なない。だが大丈夫だ。酸には弱いから胃液で溶ける。今となっては貴重なタンパク源だ」
「タンパク源って……。そんなこと言われても、こんなの生理的に無理です!」
fin
栗ご飯 @kuronekoya
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