気配

最近、よく手紙を貰う。



理由はわかっている。


あと2ヶ月もしない内に私は日本を離れ、ニューヨークという地に修行に行くからだ。



まだまだ時間があると思いきや、大人の2ヶ月はとても速い。

きっとあっという間に、その日は来るのだろう。



ところで、私は、手紙は書くのも貰うのも昔から好きだ。



手紙には、きっと伝えるという「意味」以上の何かがある。



伝える、ということだけならば、SNSという合理化を形にした、文化的コミュニケーションが世界規模で普及する中で、手紙は必要ない。



でも人はあえて、ペンを取り、手を動かして、時間をかけて、特別な思いを乗せた文字を書く。



そこには、書いた人の気配が残る。

筆圧や書体、便箋の柄、内容。


その全てにその人となりが表れる。




仕事で忙しい中、書いてくれたんやろなぁ。


私が象と鳥が好きって知っててこの便箋を選んでくれたんかな?


個性的な字やなぁ、まぁあの人っぽいか。


あの人、青色好きやもんなぁ。



そこにあるのは、もはや紙と文字だけではない。


その人が手紙に残した小さくひっそりとした、でも確かな気配を感じた時、そこには色んな意味が生まれる。



「伝える」を彩るための、ただの物質に宿る生の気配。




手紙は、書くのも貰うのも好きだ。


2ヶ月の間に、私も手紙を送りたい人たちがいる。


そこにひっそりと、私の気配を残そう。

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意味はないけど、書いてみよっかなって。 @ayaka0620

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