王様とからす
斉藤なっぱ
第1話
とある穏やかな気候の王国に、それはそれは見事な黒曜石のような黒い翼をもったカラスの集団が暮らしていました。そのカラスたちの中でも特別に美しいカラスがいて、カラスは集団からねたまれ、嫌われて、いつも一人きりでした。
ある時カラスが一羽で水浴びをしているところを狩猟中だった国の王様が偶然見つけ、なんと美しい鳥だろうと思い、王様の住む宮殿につれて帰ることにしました。
カラスには贅沢な絨毯が敷かれた30畳はあろうかと思われる部屋があてがわれ、代わる代わる給仕がやってきては世話をし、王様は客人を連れてきてはカラスの美しさを褒めちぎって愛情をたくさん与えました。
だけどカラスは笑って言いました。
「わたしなぞに愛情を与えようなんてこの国の王様はばかげている」
卑屈なカラスは、幸せになれませんでした。
どんな贅沢をしてもカラスの心は変わらないのです。
卑屈なカラスはいつまでも嫌われ者のカラスのままでした。
そうして時が過ぎて王が亡くなりカラスは宮殿を追い出されることになりました。
王から愛情をたくさんもらったことを、カラスは一羽、やどりぎの木にとまって
やっと思い出すことが出来ました。
だけど気づいたときには王様はもういません。
カラスは一羽夕闇の中でカアと鳴いてそれが遠くの空まで響き渡りました。
王様とからす 斉藤なっぱ @nappa3
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