最終話 布良和哉、これからとっても大変だ

 あれから俺は、めぐるを送り届けた(必要あるかは知らない)後、家へと向かっていた。

「すっかり遅くなっちまった……」

 めぐるが調子に乗っていつまでも止まらなかったからな。

「ん?あれは……」

 俺の家の前に人影があった。まあ、予想はしていたが――

「夏菜、どうしたんだこんなところで?」

「先輩……」

 そこには夏菜がいた。もうバレてんのかな……。

 適当やってごまかしてみるか。

「ん?どうしたんだ夏菜、その手」

 俺は、あの時ボールをぶつけられた手を指さす。あの場にいないと分からない事を、分からないふり作戦だ。

「とぼけないでよ……、助けてくれたの、カズ兄なんだよね?」

「……」

 やっぱ駄目か。

「やっぱり、カズ兄は何にも変わってなかったね。私の事をいつだって守ってくれる」

「お前、俺が勝手にテニス辞めた事、怒っていないのか?」

「何でそんな事で怒るの?」

「は!?」

 え、俺の思い違い!?うわ、恥ずかしい、分かっていた気でいた自分が恥ずかしい!

「……私はただ、打ち込んでいる事を恥ずかしがらず、堂々と誇れって言っていたカズ兄が、あんな風にコソコソしていたから、怒っていたんだよ」

 ああ、そんな事言ったこともありましたね。

 でも、女の子相手に「エロゲやってるんだ!」って誇るってどうよ、セクハラ扱いされない?

「けど、今日の事で分かった。カズ兄は何も変わっていない」

 確かに、今日のアレを見たら誰だってやりたい放題している様に見えるだろう。

「本当に、ありがとう。カズ兄」

 はあ、ようやく仲直りか。いやー何もかも丸く収まって本当に良かった。




「よそよそしくしていた理由は、それだけじゃなかったんだけどね……」


           *


 後日、俺は同じく助けてくれた(最早こいつがメイン火力)めぐるを夏菜に紹介すべく、昼休み、みんなで屋上に集まっていた。

「というわけで、こいつが昨日のバーサーカーの不知火めぐるだ」

「ちょっ!?カズ、なんだよその紹介!」

「不知火先輩、ですか……。昨日はありがとうございました……」

「ああ、いいよ。私も可愛い女の子を助けられて満足だし」

 「でも」と続ける。

「その代わりと言っては何だけどさ、カズとも、もう約束してるんだよね……」

「え、え?何ですか?」

 オロオロと慌てふためく夏菜。

 ああ、そういえばアレがあったな……。

「今からお前を抱きしめるーー!!」

「ふえっ!?きゃあ!」

「うおーー、やっぱ抱き心地良いなあ……」

「ちょ、ちょっと、不知火先輩!?」

「めぐるで良いよー、私も夏菜ちゃんって呼ぶし!」

 おお、さっそく打ち解けたか……、いやー良かった良かった。

「良くない、全然良くないよカズ兄!早く助けて!」


           *


「まったく、めぐる先輩は少し自重してください」

「はい、ごめんなさい……」

 あれからめぐるは、調子に乗って胸を触ったり、スカートの中に手を入れようとしたので、夏菜の反撃に遭って正座中。

 そこまでされてもちゃんとめぐる先輩って呼ぶんだね。

 そして俺は――

「まったく……、それで、カズ兄」

「はい……」

 めぐるの隣で同じく正座させられていた。

 俺がきっかけでしたからね、しょうがない。

「私が言いたい事、分かるよね?」

「はい、存じ上げております」

 ああ、何で俺達は昨日救った少女に、揃って正座させられているのだろう。

「それじゃ、目を瞑って」

「はい……」

 ああ、怖いなあ、何されるんだろ。こんな時俺がMだった――

 頬に触れる柔らかい感触。

「は?」

 思わず目を開ける。

 すると、思った通り夏菜の顔が近くにあった。

「お、おま、え、え、えええ!?」

「そ、それは、その、昨日のお礼だから!だから、その……」

 二人の間に流れる微妙な空気。

 そしてその間に挟まれるめぐる、ドンマイ。

「……ごめんね、夏菜ちゃん、カズ。やっぱ私も我慢できないわ」

「は?何言ってんだおま――」

 今度は口を塞がれた。目の前にはめぐるの顔。

「「――――!?」」

 俺と夏菜は揃って驚愕の顔、当然である。

「おま、お前、お前まで何やってんだー!?」

「だって……、私だってカズのこと好きだし……」

「え、いや、え?そうだったのかーーー!!」

 何かもう訳が分からなくなってきた。

 いろんな事が起こりすぎている。

 とりあえず分かることは――

「というわけで、ゴメンね夏菜ちゃん!カズは渡さないよ!」

「わ、私だって、負けませんから!」

 俺の周りの事は、何一つ丸く収まっていないと言うことだ。

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エロゲが出会いってマジっすか 卵粥 @tomotojoice

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