第10話 味方の数を引き合いに出すのは死亡フラグ

 おお、おお、ざわついとる、ざわついとる。

 なんせ自分たちのリーダーが突如現れた変態に殴られたからな。

「な、なんだテメエは!?」

 お、こういう台詞マジで言ってくれるのか!だったらこっちも答えなきゃな!

「俺か?俺達は――」

「構うもんか、やっちまえ!こっちの方が人数は多いんだ!」

「は!?」

 こいつら正気か!?名乗り口上中に攻撃って、ヒーローの変身邪魔するようなもんだぞ!

 そんなことされたら――

「名乗り口上邪魔してんじゃねええええ!!」

「ぶべらっ!?」

 めぐるがキャラ変えてブチ切れちゃうだろ!

 跳び膝蹴りが決まった哀れなチンピラAはそのまま吹っ飛んでいった。

 ちなみにめぐるは短パン履いているので、パンツは見えませんよ?

「よっしゃカズ、口上の続きだ!」

「いや、もう向こう戦闘準備万端だぞ」

 こちらの出方を伺っているモードである。

「そんなもの、口上言いながら蹴散らしたらいーじゃん!」

「そんな芸当俺は出来ません」

 あと、なんだかんだ言って言うの恥ずかしいしな……。

「ほら、さっさと潰すぞ」

「ちえー、せっかく覚えたのに……」

 おっとそうだ、忘れてたや。

「お嬢さん、下がっていてください」

「おじょうさ……、私ですか!?」

 お前以外に誰がいる。つーかお嬢さんて。

「よっしゃ、やるぞ!」

「おし、そんじゃ私が先陣切っちゃうぞー!」

「くそ、なめられてたまるかよ!」

「たった二人だ!たたんじまうぞ!」

「「「おお!」」」


            *


 結論から言おう。

「もう、全部あいつ一人で良いんじゃないかな」

 あいつ何なんだよ、男共が涙目で逃げてるぞ。

「はははー!子供の頃はバトル漫画ばっか読んでいた私に勝てると思ったか!」

 なるほど、そりゃ勝てるわけが無い――とはならねえよ。どういう理論だ。

 すると、逃げている男の中に、ラケットを持っている奴がいた。

「ああ、なるほど。あいつが――」

 あいつが夏菜を傷つけやがった奴か。

 俺は持っていたラケットを使い、その男の頭に向かって全力でサーブを打ち込む。

 打ち込んだボールは逸れることなく、男の頭へと吸い込まれて行き――

「ギャン!」

「ふん、この程度朝飯前だ!」

 いやー当たって良かった。一年もやってなかったから、当たらないかなーって思っていた。

 とは言っても、俺がやった事はそれくらい。

 だってどっかのバーサーカーが暴れ回るだけでみんな逃げて行くもん。

「ヒャッハー、汚物は消毒だーー!!」

 おーい、帰ってこい。キャラ変わりすぎて誰か分からなくなってきているぞ。


            *


「よーし終わり!カズ、帰ろうぜぇ」

「あ、ああ、そうだな……」

 こいつは怒らせないようにしよう。

 俺は目の前の地獄絵図を見て心に誓った。

「あ、あの!」

 おお、夏菜か。やべえ忘れてた。

「あの、さっきのサーブ、ひょっとして――」

 ヤバい、バレる!?

「そ、それじゃあ俺達はこの辺で、サラバダー!」

「あ、ちょっと……」

 俺はめぐるの手を引いてさっさと撤退する。

 これだけやりたい放題したのがバレるのは勘弁だ!


          *


「はぁ、はぁ、な、何とか巻いたかな……?」

 慌てて装いも戻して、仮面もしまう。

 ちなみにめぐるはと言えば、格好もそのままに、さっきまで握っていた方の手を見てニヤニヤしていた。



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