第9話 うしろゆびさされるもの〜散らせるための子守唄〜

 それから俺達は、放課後、奴らの部活が終わるまでの間、いろいろと準備をしていた。

 面が割れないための変装道具とか――

「おい、なんで仮面なんだ。しかもコレ――」

「いやー、私の家にちょうどあってさ。カズもこの作品やったろ?」

「やったよ、超泣いたわ」

 …正面から潰すための武器用意したり――

「へー、カズはラケットかぁ」

「ああ、一応遠くから体の部位正確に打ち抜けるくらいの技術はあるからな」

「それ、くらいってレベルなの?」

「そういうお前は?見たところ何も持っていないようだが……」

「ふふふ、私の武器はこの身一つさ!」

「……」

 ……昼間考えた台詞の打ち合わせしたり――

「法が許しても、我ら……、なーカズ、チーム名なんだっけ?」

「やっぱここいらなくね?チーム名も無駄に長くて覚えずらいし……」

「何言ってるんだよー、ここ切り取るとか正気か?」

「お前が覚えられてないんだろうが!」

 ………こんなことで大丈夫なのかって?

 俺が聞きたいよ。


            *


 まあ、本番がやってきてしまったものは仕方ない。

「なあ、やっぱこの格好すげー恥ずかしいんだけど……」

「何言ってんだよカズ、今のお前、すげー格好いいぞ!」

 いや、これで人前出るとか正気じゃねえわ。

 今の俺の格好は、制服の上着をマント代わりに、そして顔には仮面である。

 いや、めぐるも同じ格好してるんだけどね。

 ちなみに俺が着けているのは、皇が着けていそうなやつで、めぐるが着けているのは、右近衛大将が着けていそうなやつである。

「これで飛び出すとか、夏菜もどっちに襲われそうなのか分からなくなりそうだな……」

「大丈夫だって、もし正体バレて嫌われたりしたら、私が責任持って嫁に行ってやるからさ!」

「ああー、そうだな、よろしく頼むよ」

「ふえっ!?」

 適当に流したつもりだったのだが、めぐるは顔が真っ赤になっている。

 恥ずかしがるなら、初めから言わなければ良いのにな……。

「と、とにかく!集中だ、格好なんか気にするな。要は私達が勝てば良い!」

「まあ、そうだな」

 そうやって、俺達はただ、夏菜が来るのを待ち続けた。

 幸い、人通りが少ない場所で待機中なので、周囲の目は無い。あったら通報確定だ。

 そして――

「来た!」

 夏菜が来た。周りを見ても特に異常は無いか……?

 いや、よく見てみると、柱の陰に数人男の影が見える。

 そして、ようやくお出ましである。

「へへ、星鳴ちゃん、待ってたぜえ……」

「……澤永さわなが先輩ですか、何の用ですか?」

 へー、あの部長さん、澤永なんて名前だったのか。

「いや、何。俺は可愛い子が大好きだからね、星鳴ちゃんとも遊びたいなと思ってね」

 その言葉を皮切りにゾロゾロと男共が出てくる。

 どうでも良いけど、イケメンも悪い顔してるときはブッサイクだよなー。

「はぁ、付いてきているのに気づいていないとでも思ったんですか?」

 そう言って夏菜は携帯を取りだしたが――

「っ!!」

 その手にテニスボールが当たり、携帯を取り落とす。

「へへへ、もったいぶらずさっさと呼べば良かったな。まあ、その時は襲うタイミングが早くなるだけだったけどな」

 へー、そうだったのか。じゃあここまで携帯出さなかった夏菜に感謝だな。

 なんせ――

「フンッ!」

「うがっ!?」

「え?」

 このスカしたクソ野郎を思い切り殴れるわけだしな。

 ところで、ラケットで頭思い切り殴っちゃったけど、死なないよね?

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