その他大勢の雑感
「なあ、なにやら石派、紙派、鋏派といろいろ出てきてやかましいな」
「しゃあない。ポリティシャンというのはそういうものだ」
「でもよう、世の中全体で見れば、あいつらほんの少数派に過ぎないのによう」
「多数派は俺たちなのにな。どうしてもあいつらに敵わないってのが、しゃくにさわる」
「敵わない? それは違うぞ」
「そうかあ? あいつらのやりたい放題じゃん」
「俺たちは、勝った負けたという俗物的な思考のはるか向こうに、事実として、静かにかつ泰然と位置するのだよ。それがサイレントマジョリティの誇りというものだ。くだらない争いで疲弊するやつらには、そうさせておけばいい」
「どっぷり疲弊してるのは、あいつらにこき使われてる俺たちだと思うが……」
◇ ◇ ◇
「まあ、それはどうでもいいけどよ。結局誰が勝つんだ?」
「役に立たなくなったやつが負けさ」
「いや、だから、誰が勝つんだ?」
「今言っただろ? 役に立たなくなったやつが、負けて退場」
「?」
「?」
「あほだな、おまえら。誰が一時勝ったところで、結局最後は他の誰かに負けるんだよ。絶対勝者なんか最初からいやしないんだ」
「じゃあ、連中がぎゃあぎゃあやらかしてるのはまるっきり無意味ってことか?」
「俺たちにはね。誰が勝とうが、俺たちの扱われ方に変化はない。そして、あいつらの中の敗者は俺たちと同列に落ちる。さらに、どの勝者もいずれ敗者になる。直接争っているあいつらには勝敗を争う意味があるのかも知れないが、俺たちにはまるっきり意味ないよ。最終的に、その他大勢の数が少し増えるっていう結果が残るだけさ」
「なんだなんだ。身も蓋もないな」
◇ ◇ ◇
「なあ」
「うん?」
「マテリアル間のナマの戦いということじゃなく、象徴的なハンドサインとして石、紙、鋏の優劣を競わせた場合、結局どれが強いんだ?」
「実際に戦わせて決めればいいだろ? 俺は、泥仕合の末に結局ノーコンテストになると思うがな」
「どして?」
「拳と平手と目潰しだぜ?」
「ううう、筋が通る通らないに関わらず、仮決めでも勝敗決定のルールは要るってことか……」
「いや、ルールがあっても結局殴り合いになるんだよ。それなら無観客試合でやってもらいたいね。俺たちを巻き込まんでさ」
【 了 】
+++++++++
見出し:三者競合はいいけどよ。俺たちを忘れていないかい?
紹介文:
目さんの『石の主張』 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883813354
連野純也さんの『紙の主張』 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883819529
ココロサテライトさんの『鋏の主張』 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883829238
みなさんの主張が出揃いました。でも……何かお忘れではありませんか? みなみなさま。
あ、マジメに受け止めないようにお願いします。あくまでも井戸端ということで。
カレット 水円 岳 @mizomer
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